輝く日の宮
遅ればせながら丸谷才一の「輝く日の宮」を読んだ。文学論あり、戯曲仕立てあり、作者自身が顔を出すエッセイ風の部分あり、劇中劇ならぬ作中作ありである。藝の見本帖みたいな感もあるが、それは、読者へのサーヴィスであると同時に小説の世界と現実世界をないまぜにする仕掛けなのである。作品世界の中でのいくつかの層の間での照応というか比喩というか、そういった要素もふんだんにあり、これも小説の世界が我々の生きる現実へ染み出してくる、というか、我々が引き込まれていく、というか、ともかくそうした機能を果たしている。思えば、「本歌どり」という手法にはそういう側面があるのではないだろうか。
もう一つ。この「輝く日の宮」は「ユリシーズ」(実は読んでいないが)へのオマージュではあるまいか。集英社文庫に新訳も入ったことだし、一つここは挑戦してみようかなどと思ったりした。「源氏物語」はおろか「おくの細道」も読んでいないことに気が付かされてしまったのだが。
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