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2005.01.18

ハウルの動く城

フランスでも公開が始まった「ハウルの動く城」を見てきました。当地での題名は、"Le Cateau Ambulant"。フランス語吹替版で上映する館と音声オリジナル+フランス語字幕版で上映する館があったのですが、ここは、日本人としての特権を生かして、当然後者へ。

(以下、このエントリーは、ネタバレと言うほどではありませんが、先入観無しに映画を見たい方はスキップされることをお薦めします)

サンジェルマンデプレの近くの映画館(シャンゼリゼ通りとかの映画館では吹き替え版)で午後一の回で見たのですが、観客は見渡す限りフランス人でした。ただ、笑いとかのタイミングを見ていると、多くの人が日本語を理解しているのではないかと思われました。公開直後の日曜日に当たったということで、コアなファンの人が多かったのかもしれません。終わって出てきたら、長蛇の列だった、ということは、あまり人の入らない時間帯なのかもしれず、そこに来ている人は、濃い人、という推測が成り立ちます。

公開当日だったかのラジオでは、今週末に見るべき映画、みたいなコーナー(3本紹介されていたウチの1本)で取り上げられていましたし(ただ、アナウンサーは最初から最後まで「ミザヤキ」と言っていましたが)、宮崎/メビウス展も公開直後ですし、フィガロ紙に週一でついてくる別刷りの映画・音楽会・展覧会案内特集のカバー絵をハウルのアップが飾ったりと、まあ、そんな例を挙げなくても、宮崎アニメの公開は、フランスでも一つの大きなイベントであることは、知っている人には言うまでもない事柄かもしれません。ちなみに、仏メディアの反響については、こういうエントリーが。

ワタクシは、宮崎アニメを劇場で見るのは、おそらく「風の谷のナウシカ」以来です。遠い昔のこと。だから、この「動く城」についても、他の作品のあそこが、とかこことが、とかいう関連だの類似だのは言うことはできませんし、言う気にもなりません。

で、とても良かったです。心が揺さぶられました。そして、とても変なこと(でもないか)に、ちゃんと明日からまた頑張って仕事をしないと、という気になりました。自分が今できることをきちんとやらないといけないな、という。

この映画はとても豊暁な世界です。幸福(広い意味での平和、「戦争」の反語としての「平和」に留まらず)の追求と言ってしまえば、すべてを覆い尽くしてしまうのだけれど、そこに至るまでの道筋として何本もの事柄が絡み合って描かれていて、でも、その中でワタクシとして一番強く感じたのは、「科学技術の倫理(あるいは「科学技術と倫理」)」という事柄です。

火はプロメテウスの昔から技術の象徴でした。この映画に登場する火の悪魔は、「ニーベルンクの指輪」の火の神ローゲと同様、その流れを汲んでいます。巨大なハウルの城を動かすのは、ひとえに彼の力です。しかし、彼がそれをしなければならないのは、ハウルとの契約に縛られているからです。契約では、ハウルはその悪魔の力を使う引き替えとして「心」を悪魔に渡しているのです。

ここで、科学技術というものは、戦争を機会として非常な発展を遂げてきたという歴史の事実が思い起こされます。軍事面での戦争はもちろんですが、富を得るための競争もこれに入ります。ある意味、「心」を悪魔に差し出すということと科学技術が進歩するということが不即不離の関係にあった局面というのは少なくないと思います。第2次世界大戦の時代の原爆開発競争が一つの例でしょう。

その行き着く先には何があったのか、何があるのか、どうすればいいのか、それをワタクシはこの映画を見て感じました、考えました。これは、もちろん、正解がある事柄でもなければ、簡単に解決策が見出されるような類のことではなく、だからこそ、映画では「心を取り戻す」という寓意的な表現で「解決」が示され、あとはみんなそれぞれ自分で考えろ、という問題提起なのでしょう。

なお、作品というのは、作家の側に全面的に属しているわけではないですから、ここで「宮崎のメッセージ」という言い方はしたくありません。作品の発しているものは、それ自体恐らく混沌としていて、ある部分は単なる観客に感じる、考えるきっかけを与えるにすぎないものだと思います。そうでなければ、それはただのプロパガンダです。

で、話を戻しますと、ワタクシも「考えました」と言っても、もちろん、すぐに答が出るようなわけでもなく、ずっとそればかり考え続けていると辛いので、少し上に戻って「自分もできることをしないとなぁ」という感想に、つながっていったわけです。

ここでやめますが、あと一つだけ、ワタクシは、「オズの魔法使い」を思い出しました。

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