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2005.08.02

1864年

前のエントリーでなぜ1864年にベートーヴェン通りができた(左様改称された)は分からない、と書きましたが、その後、少しコレについて考えてみました。

1860年代のパリの音楽シーンの主役は、やっぱりオッフェンバックとグノーだったのでしょう。もっとも、ビゼーは「真珠取り」とか「美しきパースの女」とか発表していたし、マイヤベーアやベルリオーズは60年代半ばに亡くなるとはいえ新作の初演もありました。ヴェルディのパリでの「ドンカルロ」初演もこの頃です。

かたや、フォーレはまだ音楽院を卒業したばかり、フランクは今に残るような作品をまだ書いていません(ということが即「当時受けなかった」ということはないですが、フランクはそうでしょう)、サン=サーンスでしょうか、絶対音楽である程度の人気を得ていたのは(まったく確証なしですが)。

この中でベートーヴェンはというと、アブネック・パリ音楽院管によるそれこそ歴史的な「英雄」の演奏が1828年、これと関係があるのかどうか知りませんが、この年からパリでは彼の音楽に対する認識(というか興味関心)が飛躍的に向上したのだそうです。その後、1831年の第9の演奏は、その後ベルリオーズやワーグナーに受け継がれますが、60年代に爆発的に彼の音楽が爆発的にはやったという事件は見つけることはできませんでした。

ではなぜ、1864年に「ベートーヴェン通り」が誕生したのか。ユウスケさんが前のエントリーにコメントしてくれたように、この頃はオスマンによるパリの大改造が進行中で、その中でもしかしたら大幅な通りの改称事業?があったのかもしれません。ただ、その時にベートーヴェンが何故、ということです。

ワタクシの仮説は、この頃の政治・社会状況によるものではないかというものです。この時期は第二帝政の後半期に当たり、同じナポレオン三世の統治ではあっても前半とは異なり、むしろ共和制への移行とも言えるような自由な空気が横溢する時期であった、とされています。そうした中で「自由の希求の象徴」「不屈の闘い」の象徴としてベートーヴェンは認識され、通りに名前が付けられる栄誉に浴したのではないかと思うのです。

そうして、この作曲家に対するこうした捉え方は、その直後に西洋音楽を受容した我が国においては「楽聖」として根付き、ロマン・ロラン(ちょうどこの通りの改称の2年後に誕生)によって念押しされたのではないか、と思います。

ということで、いやぁ、ちょっとテーマが大きすぎましたね。論文書けそう。もちろん、たかがブログなのでそこまで調べていません。乞う、ご叱正。

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Comments

>ユウスケさん
その後調べていくと、やはり1864年というのは「通りの改称」事業があったのではないか、という感を強くする事柄に当たりました。ただ、おっしゃるように採用された「人」についての比較が必要ですね。詳しくは本編で。

>pfaelzerweinさん
なんと言ってもパリは通りの数も多いのでドイツ人の名前の通りも多いです。でも、ワーグナーもブルックナーもないんですよね。マーラーもないけれど。。。ここいら辺になると政治的理由もあるかもしれません。

こんにちは。ベートヴェンが意外と使われていないフランス道路事情を読ませていただきました。

ドイツの町では、中華料理屋があればベートーヴェン通りがあるようなわけで、殆んどの町にあるという感じです。因縁があるのは逆に数少ないでしょうね。多い名前から調べると面白そうです。何処も同じのバーンホフ、ポスト、ヴァルト、人の名前ではカール、ルドルフ、ゲーテ、カントなどでしょうか。

Pariserstrasse, Bizetstrasse などがフランス名では有名なところでしょう。

なるほど、やはり背景を調べるとどんどん深みにはまっていきそうな、面白そうなテーマですね。
同じ頃命名された通りの名前に、19世紀初頭の芸術家の名があるのかどうかというのも、一つの手がかりになるかもしれませんね!

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