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2005.11.25

第2回弦楽四重奏ビエンナーレ(4)

(2)でふれた、本ビエンナーレについての、シテ・ドゥ・ラ・ミュジークの制作部長(Emmanuel Hondre、音楽学者)に対するインタビュー、以下に拙訳を載せます。原文は、abeilleinfo.comというフランスの音楽情報ウェブサイトに載っているものです(こちら)。

------------------以下インタビューです-----------


-どのようにこのビエンナーレのプログラムを作ったのですか?

EH シテのロラン・バイル館長、今回の音楽顧問であるオリヴィエ・マンテ氏と共にまず第一の柱としてパスカル・デュザパンの四重奏曲全曲を決めました。第5番はこのビエンナーレのために作曲されたものです。
 第二に、純粋音楽と標題音楽の問題を考えたいと思いました。四重奏の音楽はそれ自体で価値のある物なのか、それとも音楽以外の、政治的とかあるいは語るべきテーマを持ち得る音楽なのか。音楽の背後にテーマがあるときには、書法が変わってくるのだろうか。例えばハイドンやモーツァルトの四重奏曲につけられた「標題」の多くは出版社によるものであり作曲者によるものではないことが分かっています。反対にベルクの「抒情組曲」は純粋音楽だと思われていました。この作品の背後に隠された愛の関係が明らかになったのは20世紀のことです。
 第三の柱は、四重奏の書法の許容範囲を検証することです。四重奏は一般に4つの同族楽器、主として弦楽器のアンサンブルを志向しますが、ピアノか他の楽器を追加したりそれらによって声部の一つを置き換えたときには何が起きるのか?それは狭義の意味での四重奏から外れ、五重奏の域に入るのか?しかし、チェロ2挺のシューベルトの弦楽五重奏は形式的にはまったく四重奏なのです。
 四重奏の形式は4つの弦楽器によるものと決められているということは後験的に信じられてきましたが、それは間違いです。四重奏に共通する点というのは、4つの声部の相互浸透と響きの統一性を追求するということで、それは「異質な」楽器が加えられたとしても変わりのないことなのです。

-四重奏団はどのような基準によって選んだのですか?

EH まずデュザパンの四重奏曲の全曲演奏を実現させたいということとの関係が第一でした。了承してくれた団体もあればそうでない団体もありました。他の四重奏団はそれぞれ固有の企画との関係からの選択です。例えば、ターナー四重奏団は音楽博物館の楽器を演奏するという企画ですし。その楽器というのは1813年から1840年の間に製作されたもので、ベルリオーズの時代のパリの雰囲気を味合わせてくれるものです。これは滅多にない企画です。というのは、ターナー四重奏団のメンバーはこの場で練習もしなければならなかったからです。博物館のこの楽器に旅をさせるわけにはいかないですから。このような企画は、例えばワシントンのスミソニアン博物館などのアメリカのいくつかの博物館で行われていることです。

-四重奏の聴衆というのはどのような人たちでしょう?

EH とても専門的な聴衆だと思います。ブルジョワ家庭の家で四重奏が行われていた時代を受け継いでいる人たちです。
 四重奏の音楽はとても難しいものです。というのは、四重奏は音楽そのもの以外の支え、つまり、寄りかかるべき物語とか集中すべき歌手とかそういうものを必要としないからです。四重奏団の4人の奏者の名前はまれにしか言及されないということを考えてみてください。それぞれの奏者の特徴が知られているのは珍しいことなのです。


-四重奏団内部のまた外部の人との人間関係については数多くの神話が流布しています。4人の奏者のうちで本当に話をしてもらえるのは1人だけで、それはたいがいチェロ奏者だなどとも言われています。こういうステレオタイプについてはどう思われますか?

EH 四重奏団というのは人間的にもとても難しい道程だと思います。四重奏団が良い音を出すようになるのは何年もたってからのことだからです。そこまで至るためには、お互いよく聞きあわなければなりません。奏者達は、理解し合うために言葉を交わす必要もないこともある程にお互いをよく知っていなければならないのです。

-四重奏というのは、ゲーテが言ったような「4人の分別のある人々の会話」ではないということなのですね。

EH ええ、そうは思いませんね。私にとっては、四重奏とは静かでブルジョア的なジャンルではありません。

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