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2006.01.17

モーツァルト自筆譜@大英図書館

ロンドンの博物館(図書館)でモーツァルト関係というと、ここのところニュースが2つあるのですが(ついでながら坂本くんのところには「今日のモーツァルト・ニュースなるコーナーができました)、ご紹介しようとしているのは、コンスタンツェが破いた自筆譜が一緒になったというニュースではなくって、こちら

しかし、リンク先(ロイターのニュース)の説明中、

モーツァルトの全作品リストから選んだ楽譜30ページ分と、75曲のさわりの部分を、大英博物館がデジタルデータ化したもので、ウェブサイト上(www.bl.uk/turningthepages)で視聴できる。
というのは、ちょっと違います。

この説明だと、大英博物館(大英図書館(ブリティッシュ・ライブラリー)は組織上大英博物館の一部ではありますが、大英図書館としておいた方が分かり易いと思いますが)が曲を選んで、その曲の自筆譜の楽譜(全体で30ページ分)をデジタルデータ化しているように見えますが、実際に展示されているのはモーツァルト自身が作った音楽カタログ(30ページ)。見開き左側ページには、作曲完了日と曲名、そして多くの場合楽器編成が書かれており(1ページに5曲)、右側ページにはそれぞれの曲の冒頭(さわりではなく)の楽譜(ピアノ譜)が載っているのです。
これを書いたのはモーツァルト自身ですから、自筆譜という説明は間違いではありませんが、作曲の過程が分かったりとかそういうものではありません。

興味深いのはこれは何のために作ったのだろうかという点。いわば商品見本帳を自分で作って営業活動をしていたんじゃないかと想像します。今ならデモCD。貴族相手に異色作の注文をとったり、音楽会を開くに当たっての予約者を募る際の作品見本、あるいは出版社相手ということも(ロンドンとかパリとか)あったかもしれません。ここのところは18世紀の音楽の生産と消費の実態についてワタクシは詳しくないので、不確かな話ですが。左側ページの作品データに作曲場所、初演時の歌手、注文主などが書かれているというのは想像のヒントになるかもしれません。

あるいは、単に自分の記録のためのものなのかもしれませんが。

自信作(あるいはヒット曲)をモーツァルトが選んでいれば、もっと面白かったのですが、表紙にはモーツァルトの1784年以来の全作品カタログとなっており、実際、殆どの作品が網羅されているとのことです。こういうことはなかなか充実した解説(画面上のテキストでも見られますし、オーディオガイドもあります(ただし両方とも英語))で知りました。ケッヘル番号でいうとK459(ヘ長調のピアノ協奏曲(第19番)からK623(フリーメーソンのためのカンタータ)までであり、最後にこのカタログに作品が加わったのは彼の死の3週間前とのことです。もちろん「レクイエム」は未完成だったので載っていません。

逆に現在では失われてしまっている曲も含まれているとのことで、ロイターの記事にある「今回はじめて録音されたという珍しい曲」というのはこのことでしょう。ただ、全曲が発見されたというわけではありませんし、その楽器編成で演奏された録音というわけでもありません。演奏は、すべてフォルテピアノ(かなぁ、とにかく同時代の鍵盤楽器)で行われています。そもそもこのカタログは、管弦楽曲であろうと何であろうとピアノ譜が掲載されているわけですし。また、記事にある「演奏されることの少ない作品などは、最初の数小節を聴くこともできる」というのも誤りで、このカタログに載っている曲はすべて演奏されています。

というわけで、ロイターの記事(朝日新聞にもキャリーされちゃったりしていますがと実際のウェブ上の展示は大分違うものなのですが、いずれにしても、この展示はとても面白いので、一度ご覧になることを強くお勧めします。

と、ここまで書いて気になったので、ロイター英国サイトに行ってきました。元記事はこれ。さすがにこちらにはブリティッシュ・ライブラリーのウェブサイトの展示が正しく紹介されていました。で、この英語から訳していくと
まあ、ロイター日本語記事のようになっても仕方なくもない(かなり好意的に見て、ですが(だって、Mozart musical diaryって書いてありますから))とは思いますが、実際のBLのサイトに当たれば朝日新聞もこんな記事を載せないですんだと思うんですが。。。

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Comments

坂本くん

コメントありがとうございました。今日のモーツァルトニュースの新しいブックマーク先、行ってきました。これが正確ですね。
ワタクシ自身も「原本は145曲分でそのうちの75曲分を公開」というのは見落としていたので、参考になりました。というか、この事実があると、あんまりロイター日本語版も糾弾できないかも(汗)。

くだんの「音楽日記帳」、右上にページ数のようなモノが見えるのですが、それが所々数字が飛んでいて、変だなぁ、とは思ったんですが(←見苦しい言い訳)。

さて、確かにレオナルドダヴィンチのスケッチ帳も面白いですよねぇ。こうやってどんどん所蔵品がデジタルデータ化され、著作権に問題のないものはウェブ上で公開されていくんでしょうね。

他にもお宝がありそうで楽しみです。

Posted by: ガーター亭亭主 | 2006.01.18 at 02:59 AM

こん○○は。
確かにロイター日本版の記述だと、少し紛らわしいですね。「今日のモーツァルトニュース」のブックマークも他所のサイトに変えました。
ところでBritish Libraryの例のページですが、「モーツァルトの日記」の隣の「ダ・ヴィンチのスケッチ」も面白いですね。

Posted by: 「坂本くん」 | 2006.01.18 at 02:12 AM

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