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2006.05.29

ノーメンクラトゥーラ

Rues

「音楽家の道」シリーズでは、道の長さとか開通年とかのデータを紹介することもありますが、もちろん、タネ本があります。上の"DICTIONNAIRE HISTORIQUE DES RUES DE PARIS"という本です。上下2巻本で、基礎データの他に昔の写真が載っていたり、何番地には昔誰それが住んでいたなんていう情報もあって、なかなか楽しい本です。

ですが、最近、公式データ?だけなら、ウェブサイトで見つけられることが分かり、もっぱらそれを愛用しております。

例えば、ビゼー通りは、ここでその内容を見ることができます。アドレスは「http://www.v1.paris.fr/CARTO/Nomenclature/4123.nom.html」となっており、どうもパリ市役所のサイトの一部のようなのですが、パリ市役所の普通のウェブサイトからの入り口は未だに発見していません。もしかして、部内用のものなのかもしれません。
まぁ、普通の人が必要としている情報ではないでしょうし、隠すべき情報というわけでもないので、非公開ではないけれど積極的に公開しているわけではない、というところでしょうか。
ですから、このパリ中の道を網羅しているサイトには、通りの一覧表のようなものがあるのかないのか分からないのですが、いずれにしても、それにたどり着くことはできずにいます。

では、これと思った名前の通りのデータはどう入手するか。上のアドレスの「4123」がパリ市役所が振っている通りの番号に一致しているようであり、また、その番号は通りの名前のアルファベット順に振られているようなので、見当を付けて適当に数字を変えていくとそのうち目的の通りの上方に行き着くというわけです。が、かなりの確率で「ハズレ」があります。後から新しい名前の通りが誕生したときのためなのでしょうか、現時点では欠番が非常にたくさんあるのです。ですから、結構根気の要る作業ではあります。

さて、ここからが本題?です。

アドレスの、その数字の入っている部分の直前には「Nomenclature」とあります。また、表示されるページのタイトルも「Extrait de la nomenclature officielle des voies de Paris」とあり、その下に通りの名前が表示されています。

ノーメンクラチュール??

ノーメンクラトゥーラと言えば、ソ連とかの特権階級を指す言葉としてしかワタクシは認識しておらず、なぜ、この「通りの名前集」がこう名付けられているのか、とんと分かりませんでした。

それが、ようやくこの間から読み始めた「ローマ人の物語」で、疑問が氷解しました(多分)。

同書によれば、ローマの有力者、特に選挙の立候補者には、道で支持者(あるいは支持を期待する相手)に会ったときに、その人についての情報を覚えていて素早く有力者に耳打ちしてくれる奴隷がいたのだそうです。それに基づいて有力者は適切な挨拶をし、支持者に「自分のことを気にかけてくれているのだなぁ」と思わせて、支持を確実なものにする、という構図です。そして、この役割の人を「ノーメンクラトール」と呼んだのだそうです。「ノーメン」は「名前」、「クラトール」は「世話をする人」という意味だそうです。

仏和辞典では発見できなかったのですが、名前を網羅して知っている人や名前を網羅している物のことを指して「ノーメンクラトゥール」というのはここから来ているというわけでしょう。

で、このように網羅的に重要な情報をおさえている人、というのは当然権力をもつ、場合によっては、「実力者」本人より力をふるうこともあり得るでしょう。何となく国会議員の有力秘書、というものを思い浮かべたりしてしまいますがそれはさておき、それが共産主義国家の特権階級を指す言葉としても使われたということでしょうか。あるいは、その名簿のようなものを思いのままに操るという意味合いかもしれません。

まあ、パリ通りの名前を知っていても、ワタクシにはいっこうに実益はないわけですが。。。

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