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2006.07.11

ジダン

一夜明けて、今大会のジダンについて振り返り、決勝で起きたことについて考えをまとめようという気がわいてきました。ココログは11日の14時から48時間の予定でメンテに入り、投稿もコメントも出来ないとのことなので、その前に、と思いました。

大会前の3つの準備試合(特にメキシコ戦とデンマーク戦)では、ジダンは正直言って精彩を欠いていました。これは1次リーグの間も大差ありません。そんな自分にいらだっていたのでしょうか、韓国戦ではもらわなくても良いような状況でのイエローカードで、トーゴ戦は出場停止となってしまったのでした。

この時点ではフランスは1次リーグ突破も危ぶまれており、決勝に駒を進められなかったとしたら、ジダンは自身の最後のワールドカップにおいて、自分のチームの最終戦に出場できないという結果になっていたところでした。しかもこの6月23日は彼の誕生日。

しかし、フランスは勝ちました。やはりこの日が誕生日のヴィエラ(ジダンより4歳下)の活躍によって。

そして、決勝トーナメント。決勝トーナメントは、各チームとも引き分けではなく勝ちに来る分フランスのような守備的チームには有利、という解説もされましたが、それでも、このチームは別のものに生まれ変わったかのような勢いでした。ジダン自身も然り。

スペイン戦のゴールは素晴らしかった。ディフェンダーを交わしてのああいう体勢から切り返す角度へ打つというのがやはり普通ではないです。シュートの瞬間、キーパーは完全に逆側に体がいってしまっています。

しかし、やはり何と言ってもブラジル戦。この試合のジダンは神がかっていました。それ以上に言う言葉がありません。

ポルトガル戦でのパフォーマンスは、ブラジル戦ほどではありませんでした。全盛期を過ぎた今、彼のパフォーマンスは体調がどれだけ維持されているかにかかっているわけで、毎試合あれを求めるわけにはいかないでしょう。しかし、1次リーグまでの彼とは明らかに違っていて、波はあるにしてもその中で全体として調子を上げてきた、というか好調を維持していると感じました。ジダンをまた見られてよかった、もうこれをあと1試合しか見ることが出来ないのか、と感じさせるものでした。
また、この準決勝、試合開始の時点でフランスには6名、ポルトガルには5名のイエローカード保持者がいました。ジダンもその1人で、ここでも、「最後の試合に出られない」危険はあったわけです。まあサッカーではそんなに珍しい事態ではないわけですが、ジダンは98年の大会でも途中で出場停止になるなど、その前歴からしても、無事で決勝に出場することを祈るのはひとしおだったわけです。その意味でも「もう1試合見られてよかった」と。

そして決勝。

彼は決勝トーナメントに入ってからの好調は維持していました。フランス全体として見ても、前半はイタリアに支配されながら同点で終え、後半はフランスのものでした。このままいけば勝てる、と思ってみていたのですが。。。

退場直前のヘッドは本当に惜しかったですねぇ。いや、もちろん、あのくらいの惜しさというのはそれほど稀なものではないわけですが、決勝の、延長で、ジダン、しかも彼の最後の試合、というと、やはりサッカーという物語にとっては大きく意味が違うわけで。

その後起きたことについては、今現在では、マテラッツィが何を言ったかに関心が集中している感はありますが(もちろんワタクシだって気になります)、サッカーとしては、とにかく、マテラッツィの挑発があってそれにジダンが乗ってしまい、退場、と、そういうことです。

ジダンは、この手の挑発に乗ってしまうことが少なくないように思います。それをマテラッツィも知っていたのでしょう、もちろん。その発言内容が何であれ、挑発に乗ってしまえばそれは負けで、暴力行為が認められれば退場です。ですから、乗ってしまったのは、もちろんジダンとしては失敗でした。ただ、ワタクシには分からないことがあって、選手同士の間での暴言(審判に対するそれではなくて)というのは、イエローカードやレッドカードの対象になるのでしょうか?それとも、やはり(少なくとも試合中の裁定としては)「手を出した方が罰せられる」ということなのでしょうか。この手の喧嘩は、原因までどんどん遡っていってということになるとキリがないからそうなのかな、とも思います。

ですから、この退場自体は仕方のないことです。いや、今は気持ちを落ち着けるようにしてそう書いていますが、この退場がなければ、残りの10分だってどうなったか分からないし、PK戦だって、と、どうしても死んだこの年を数えてしまうわけで、よりによって、この場面でジダンは我慢できなかったのかなぁ、という思いは未だに捨てることは出来ません。

この退場に関してはジダンとマテラッツィの間のこと以外に3つ書いておきたいことがあります。

主審は問題の行為を見ていなかったというのは事実のようです。見ていたのは副審と第4の審判、という説と第4の審判のみ、という説と、さらに、見ていたのは、リアルタイムで審判が自分の目でその場面を、という説と、場内のスクリーンに映し出されたビデオ映像を、という説があるようです。ユーロスポーツの実況では、この場面、まず(マテラッツィが倒れているのを見て)「何が起きたのでしょう?」という言葉があり、この時点ではカンナバロとトレゼゲが言い争っていることから、トレゼゲが何かしたのか、という雰囲気で、「副審が何か言っています、ブッフォンが見ていたようです」(よく聞き取れない)とのアナウンスに続き頭突きのシーンが放送され「ア、ノン、、ア、ノン、ジズー」という悲痛な声をアナウンサーと解説者が上げます。そして、場内の大画面でもこの映像が流されていることも放送されています。そして、ブッフォンは「お前見ていただろう」と副審にアピール。主審は副審と協議して(といってもほんの二言言葉を交わした程度)レッドカードを、というのが一連の流れです。
この様子からは、副審は自分で見ていただろう、とも思いますが、仮に4人の審判の誰もが(場内に流れた)ビデオ映像しか見ずに判定を下したのだとしたら、それは問題です。ビデオ映像を判定には使わないというのがFIFAの方針(?)と理解していますから。
いずれにしても、審判のミスジャッジは今大会に限ったことではないですが、ビデオ映像によってそれが誰の目にも明らかになってしまうことがことのほか多かったように思います。ワタクシ自身は、「審判は時間を含めて試合のすべてを掌握する神であり絶対」という説をとっているので、ビデオの判定への全面的な導入というのは勘弁して欲しいと思っています。サッカーは時間のアナログな流れが大切なので、野球や相撲のように一区切り一区切りデジタル的に進むものとは訳が違い、いちいち判定に対して誰かが抗議、ビデオ確認、というのは程度問題でしょう。ゴールの確認者というのは置いても良いと思いますが。アイスホッケーみたいに。
それから、いったん下した判定をビデオによって覆す(ゴールとノーゴールとか)というのと、審判の目に届く範囲外の出来事をカメラが捉えていて、それを(特に暴力行為などの反則の)判定に使う、というのは少し違うことのようにも思うので、この部分はある程度は許せます。
とにかく、現代のように、重要なシーンが殆どリアルタイムで場内のスクリーンで繰り返し流されるのでは審判もたまったものではないでしょう。これは止めた方がいいと思うんですが。それと同時に、神である審判には、神らしくなって頂きたい、そして、神の判断の助けとしてビデオをうまく利用する方法をFIFAは考えて欲しい、と思います。

いい加減長くなってきましたが、2つめはレッドカード時のドメニク監督のアクションについてです。

テレビの映像では、彼は拍手をしブラボーと言っています。そして、掌を下に向け両腕を上から下にたたきつけるような、何かを拒否、拒絶するような仕草をしています。イタリアの監督は試合後にこのアクションを、マテラッツィが演技しているかのような意味ととっていますが、それは、イタリアの選手に向けたものか、審判(の判定)に向けたものか、それとも挑発に乗ってしまったジダンにむけたものか、ワタクシには分かりません。いずれにしても、ジダンの退場を喜んだなんてことはあり得ません。映像をよく見れば、この拍手の意味をそう取ることは出来ないと思うのですが、テレビのアナウンサーですらそんなことを口走っていたので、このことも書いておきたいことの一つです。

3つめはブッフォンとジダンのことです。中継映像では流れなかったのですが、その後のスポーツニュースでは退場直前(?)にブッフォンに慰められるジダンの映像を見ることが出来ました。その時のジダンの表情は、本当に泣き出しそうで、見ている方が辛くなってきます。


さて、最後に。上の方で「サッカーとしては」と書いたのですが、それは、この試合でのそしてその出来事についてのことです。ですから、ジダンについて「最後の最後でサッカー人生に汚点」というような報道の仕方には違和感を覚えるのです。今までジダンが聖人君子であればそういう言い方も出来るかもしれませんが、そうではないでしょう。それに、彼の激しやすい「欠点」はサッカープレイヤーとしての評価を揺るがせるものではありません。もちろんまったく無視できるとは言いませんが。それは彼のキャリア全体からみてというだけではなく、今大会だけをとってみてものことです。今大会最優秀選手賞は、引退への花道でもなければ、退場への同情(マテラッツィの「挑発」の内容に絡んでくるのですが)でもなく、今大会、プレイ、それも反則行為などピッチの中でのすべてのことをひっくるめて、ジダンは最優秀であったということだと思います。【7月13日訂正 大会MVPは記者の投票によって決定されるのですが、その投票は決勝戦開始以前から始まっていて、ジダンの退場以前に票を投じた記者が多いという可能性もあるということが分かったため、この部分は削除します。】
そして、サッカーのルールとしては制裁を受けるのは仕方のないことではあっても、決勝のあの場面での自分の行為の意味をジダンが分かっていないはずはなく、彼のキレやすい性格を勘定に入れても、やはり、マテラッツィにはかなりひどいことを言われたのだと思います。その内容は憶測も飛んでいますが(読唇術も駆使されているらしい)、とにかく、耐えられないようなことだったのでしょう。そうでなければ、頭突きまではしないのでは、とやはり思います。
あれは、サッカー選手としては残念な行為ではあっても、人間として限度を超えた侮辱を受けた時にとる行為としては当然のもので(たぶん)、その意味ではジダンの行為は否定的に捉えることはワタクシには出来ません。サッカーだって人間がやっているんだし、人間、キレることはあるじゃないですか。もちろん、舞台が舞台だけにスキャンダラスなことであるし、暴力はいけない(見ている人への影響とかも含め)というのはその通りなんだけれど、単純に「汚点」とか「惨めな末路」と片づける意見にはまったく同意できないのです。といって全面的にジダン万歳というわけにもいかず、ここに書いたようなことをめぐってまだまだ頭はぐるぐる回っているのでありました。

長文おつきあい頂きましてありがとうございました。

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Comments

「舞台・ベルリン」をわざわざ注文されたのですか!関心を持っていただきうれしいです。早く届くといいですね。

Posted by: berlinHbf | 2006.08.08 at 07:31 AM

三紗さん、コメントありがとうございました。

まさに、ブログのエントリのタイトルのように「巻き起こした波紋」という感じがしますね、この件は。色々なことを考えるきっかけになりました。

今回の「事件」としては収束しましたが、ジダンのことと今回色々と考えたことは、折に触れ思い出すことになるような気がします。

本当に彼には感謝です。

Posted by: ガーター亭亭主 | 2006.07.24 at 05:16 AM

こんにちは。お久しぶりです。

TBありがとうございます。決勝戦をよりによって見えなかったなんて残念です。「きれやすい」かどうかは私にはわかりませんが、ジダンは試合中は同僚に対しても厳しいですからね。いじめてるように見えるときもあります(笑)。

>その時のジダンの表情は、本当に泣き出しそうで、見ている方が辛くなってきます。
そうでしょうね。サッカーに人生をかけてきたんですから。私なら毎晩悪夢に悩まされそうです。

Posted by: 三紗 | 2006.07.21 at 08:15 PM

ベルリン中央駅様

コメントありがとうございました。こんなところで何ですが、「舞台・ベルリン」アマゾンで中古をゲットしました(もちろん日本語版を日本のアマゾンで)。早く読みたいと思っています。

Posted by: ガーター亭亭主 | 2006.07.21 at 09:09 AM

レスが遅くなりましたが、とても興味深く読ませていただきました。TBありがとうございました!

Posted by: berlinHbf | 2006.07.21 at 08:55 AM

junquoさま
コメントもせずいきなりTBしてすみませんでした。junquoさんのところにはツキモトさん経由のところで伺いました。

ジダンはテレビのインタビューも立派でした。

Posted by: ガーター亭亭主 | 2006.07.13 at 03:35 PM

はじめまして。TBありがとうございました。すごく長い文でしたが、ガーター亭主さんの熱意を感じられました。同感です。私も、ジダンが「汚点」とか言われることが許せませんでした。
関係ないですが、ジダンの映画も楽しみです

Posted by: junq | 2006.07.13 at 02:57 PM

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