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2006.10.29

内田光子@シャンゼリゼ

内田光子のリサイタルがシャンゼリゼ劇場でありました。
曲目は、ベートーヴェンのバガテル作品126,ソナタの28番、29番「ハンマークラヴィーア」というなかなかへヴィーなものでした。

ワタクシの席は、3階席の左45度というなかなか良いところだったのですが、視界に入る右サイドは3階、2階共にガラガラで、え?という感じでした。ただ、左サイドはかなり埋まっていたところを見ると、鍵盤側を選択した人が多かったものと思われます。それにしても入りは6割弱といったところで、内田光子クラスでもこのような感じというのは、なかなか厳しいものですね。

全体に思うのですが、パリの客層のある程度の部分は社交のためという感じですから、なかなかこのガチンコのプログラムとなると、集客も難しいのでしょう。しかし、逆に言えば、真面目に聴く人の率が高い演奏会になるということでもあります。

演奏は、一言で言えば、アヴァンギャルドなもの。控えめに言っても幻想的な感じ。2曲とも断片的と言っていいくらいに性格の異なる短い楽想が頻繁に顔を現しては交代していく曲であるという印象を強く与えるものでした。

ちょっと例えが変化もしれませんが、ブルックナーの交響曲で部分部分が滑らかにつながるように「ワーグナー風」に改訂したりせずに、ブロックの間の唐突な変化はそのままにしておく、という趣で、無理に辻褄を合わせたり全体として連続して推移するようなものにしたりはしない、というアプローチと思いました。そのためか、それぞれの部分の曲想の性格(例えば瞑想的とか激情的とか)の振幅は非常に大きなものです。

ということで、あまり耳に優しいものではなく、全体としてはむしろ突き放すような、というかとりとめの無い演奏という感じすら受けますが、それは、曲がそういうものだということなのでしょう。

もう一つ。このような演奏だと、過去に作曲された曲を再現しているというより、その場で即興演奏でもしているような錯覚を覚えました。それだけそこで音楽が生まれているということでもありましょう。


こういうアプローチを提示して、その方向で説得力のある演奏を展開する姿に、ワタクシは深く感銘を受けました。30番~32番のソナタはCDが出ているとのことで、それも聴いてみたいです。この28,29番も録音されるのでしょうか。出たらもちろんそちらも買って聞きます。

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Comments

あやのさん

お久しぶりです。
なるほどこの日はバレンボイム/ルプーという演奏会もあったのですね。お客さんの不入りはそちらに食われたせいかもしれませんね。

まったくおっしゃる通りで、静かな部分の美しさと沈潜感、それを可能にする集中力は驚異的に素晴らしい反面、強音になると色々と辛いなぁと感じたのは事実です。

余裕があるとよかった、というのも同感です。

で、反論というわけではないですが、聴いていて、ギリギリのところでやっているなぁと思いつつ、ワタクシは、ベートーヴェンか誰か他の作曲家の逸話として、ヴァイオリニストが「そんな風に弾くのは自分の楽器では無理です」とか何とか文句を言ったら「君の哀れな楽器のことなどかまうものか」とか何とか言ったという話を思い出していました。

Posted by: ガーター亭亭主 | 2006.10.29 at 11:37 PM

お久しぶりです!
私も、シャトレのバレンボイム×ルプーとどちらに行くか散々迷った末、内田光子氏を選びました。
亭主さんの感想を読んで、納得するとともに、こういう聴き方もあるんだなぁと感心しました。
私はやはり自分が弾くだけあって、技術的なこと(テクニック的なことという意味ではなく、音楽を作ることに関しても、その技術)にばかり目(耳?)が行ってしまいます。
バガテルは、亭主さんのおっしゃる、幻想的な雰囲気がうまい具合に作用していたように思います。
その後のソナタ2曲に関しては、女性ということもあって、ちょっと頑張るとすぐヒステリックに聴こえてしまうところが残念だなーと思いながら聴いていました。
でも、あのすさまじい集中力と、静かに聴かせる部分の美しさは絶品だったと思います。
ハンマークラヴィーア終楽章なんかは、ほんとに「現代曲?!」って疑いたくなるような曲ですよね(笑)
あれだけ弾けるのはやっぱりすごい!と思いつつも、
欲を言えばもう少し音楽的にも音色にも余裕が見られると良かったな~というのが私の感想です。

Posted by: あやの | 2006.10.29 at 06:59 PM

pfaelzerwein さま
いつもコメントありがとうございます。
「ブレンデルの後釜」ねぇ、なるほど。確かにそういう線でのレパートリーの披露ということになっていますね、結果的に。

となると、モーツァルトとシューベルトの間の時期だったかシューベルトの後だったかにドビュッシーとショパンを1枚ずつ録音したのは、まだその方向性が決まっていなかったということなのかもしれませんね。

いずれにしても、今回のベートーヴェンは、、リズムやメロディーで気持ちよくなるということはほとんど無く、あっても持続せず、でも、何だか凄いものだなぁ、こういう凄いことをするのは凄いなぁ、という何か次元の違う営みを見せられているような気がしました。

Posted by: ガーター亭亭主 | 2006.10.29 at 05:16 PM

途中まで読むと否定的批評かな?と思いましたが、説得力ある演奏だったと。確かにプログラム自体が「何かやりますよ」と示しているので、前半を読んでいての不安感が先行してその何かを表しているようです。

指摘されるようなパリの聴衆の性格は判るとして、このガチンコプロでドイツの主要都市で満員にするのはなかなか難しそうです。あまりにもブレンデルの後釜を目指すようなマーケティングは功を奏していないのではないでしょうか。

私はリサイタルを聞いてはいませんがシェーンベルクの協奏曲などでお馴染みです。ですから否定的な評価と云うよりも、こうしたプログラムで市場に売り込むと云うのが凄いと感じました。ご存知のようにメディア一体化した戦略など今ではその規模が知れていますから。

Posted by: pfaelzerwein | 2006.10.29 at 02:11 PM

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