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2007.03.27

タローのすべて

シャトレ劇場のディマンシュ・マタンで、アレクサンドル・タローエベーヌ四重奏団の演奏会がありました。
曲目は、ラヴェルの弦楽四重奏曲とフランクのピアノ五重奏曲。

これは、今季ディマンシュ・マタンで3回にわたった「アレクサンドル・タローのすべて」の最終回の演奏会でした。第1回はチェリストのジャン=ギアン・ケラスとの協演でシューベルトのソナチネ、アルペジョーネソナタ、プーランクのソナタ、第2回はミシェル・ダルベルトとの2台ピアノ&連弾で、モーツァルトの2台のためのソナタ、シューマン~ドビュッシーの6つのカノン形式のエチュード、海(2台版)だったのですが、この第2回も素晴らしい演奏会でした(第1回は行けず)。
ところで、このシリーズの原題である"CARTE BLANCHE A ALEXANDRE THARAUD"は、直訳すると「タローにおまかせ」となって、タロー自身が全体のプロデュースをするシリーズ、ということなのですが、何となく演奏会のタイトルとしてはしっくりこなく、勝手に「タローのすべて」としてしまっております。

さて、まずは、エベーヌ弦楽四重奏団のラヴェル。

凄く「弾ける」人たちですねぇ。怜悧な音が本当にラヴェルにふさわしく、それが精巧にしかし時に熱っぽく絡む様は絶品でした。シャトレ劇場とシャンゼリゼ劇場ではもちろんハコが違いますが、それでも、豊かな残響ではないというのは同じことで、それは先日のウィーンフィルではマイナスの要素と感じた点なのですが、このラヴェルではそれがプラスに聞こえるから不思議なものです。音が乾いているというに止まらず、劇場の空間に漂っているように感じられるのですから、もうこうなると、彼らの音、音楽そのものがフランスの風土と結びついているのだと思います。

それに、この若者たち、それぞれが自由にのびのびやっていて、かつ、絶妙な呼吸ですべてが合っています。う~ん、すごいです。特に、第2バイオリンが裏に回ったり表でやったり(ラヴェルのこの曲、第2バイオリンが主役になるtころがとても多いということを学びました)、その瞬時の役割の切り替えぶりの鮮やかさ。

あっという間に曲が終わりました。

次はタローも一緒のフランクのピアノ五重奏曲。この曲をナマで聞くのは初めて、どころか、ディスクでも真面目に聴いたことはなかったかもしれません。冒頭からヴィブラートを濃くかけて、前半のラヴェルとは違う、重くてどこか大仰な音楽を目指していたような気がします。ピアノ五重奏曲というのはどうしてもピアノ対四重奏となってしまい、その点本当に室内楽曲なのかという思いもありますが、まあ、ラヴェルほど楽しめなかったのは曲を知らないせいと言うことにしておきましょう。

満場の拍手に応えてまず弾かれたのは、たぶんピアソラで、とにかくタンゴの曲でした。ヴィオラのお兄さん(ガタイの良さがとても良い感じ)が「ピアノ五重奏ってアンコールに弾くような気の利いた小品もないし、だからアレンジものをやります(大意)」とアナウンスをして始まったのですが、自在でノリノリ、最後には非常に洒落たユーモラスな終わり方で、センスがとてもよかったです。

そして、タローが「次は真面目な音楽をやります」と言ったのには客席がニヤリとしました。話自体も真面目で、3回にわたった自分のシリーズを締めくくるに当たって「ムッシュー・ジャン=フィリップ・ラモーとムッシュー・フランソワ・クープランを演奏します」とのこと。
ラモーの曲名は分かりませんでしたが、弦楽四重奏に編曲(?)されたもので、淡々とした静かな曲。そこから間をおかずに続けてタローが弾きだしたクープランは、CDの一曲目にも入っている"Les Baricades Misterieuses"でした。CDでは「冒頭一曲目」であるのに対して、当日は「タローのすべて」を締めくくる「終わりの曲」という演奏に思えたのですが、これは、単にこちらの心の持ちようのせいかもしれません。
先述の2台ピアノだった第2回では、アンコールにビゼーの「子供の遊び」からとミヨーの「スカラムーシュ」だったのですが、その時タローは「自分に常に音楽的な糧を与えてくれた(だったかな?)作曲家の作品を弾きます。それはダリウス・ミヨー」とか何とか言っていました。

ラヴェルとフランクを本プロにそしてラモーとクープランで締めくくるこの演奏会、タローの、フランス音楽の大きな時間の流れの中での存在という自覚、と言って悪ければ、そうした先達たちの築いた仕事の上に自分があって、それを次代につないでいくという感覚、を垣間見たような気がしました。実際はどうなのかは分かりませんが、結構幸福な感覚のように感じられました。

ところで、タローのクープランのアルバムは、CD屋でも平積み状態だし、クラシック専門のラジオ局ではガンガン宣伝されています。やっぱりここはフランスです。

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Comments

こんにちは。トラバありがとうございました!

>フランス音楽の大きな時間の流れの中での存在という自覚、と言って悪ければ、そうした先達たちの築いた仕事の上に自分があって、それを次代につないでいくという感覚

ラモーのCD(私は未聴なんですが)の最後にドビュッシーの「ラモー讃」を一曲入れてみたりするあたり、まさにそういう意気込みを強く感じますよね。今回のクープランでも、少し後代の作曲家デュフリの曲を最後にぽつんと入れてますし(一方ライナーノーツでは、自分が今まで録音したバッハ、ショパン、ラヴェルを「それぞれ別々の形でクープランに近い作曲家」としていて、これもまた面白いなと思いました)。

Posted by: yusuke | 2007.03.27 at 10:40 PM

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