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2007.06.30

ヤルヴィのベートーヴェン第4番

Paavo
先日パリ管常任就任が発表された、パーヴォ・ヤルヴィ。手兵(の一つ)ブレーメン・ドイツ・カンマーフィルを率いてのベートーヴェン第2弾、7番と組み合わせて出た第4番です。

速めのテンポ、ノンヴィブラートを多用したスリムで鋭い響き、と、このコンビとして想像されるような演奏に仕上がっているのですが、その速いテンポの中で様々な工夫が凝らされているのが、ヤルヴィの一筋縄ではいかないところでしょう。

基本的には、細身の響で、音の動きそれぞれの線がくっきりと浮き上がり、「ここで、ヴィオラはこういうことやっているのね」とか改めて気付かされる、いわゆる「スコアが見たくなる」演奏。スフォルツァンドの効かせ方も暴力的なほどで、なかなかの快感です。が、それだけなら、「最近流行の」ということでくくられてしまうかもしれませんが、結構変なことをやっています、パーヴォ。

例えば。第1楽章の主部に入ってから最初のテーマまでの4小節間、6回ソの和音が鳴らされて、テーマでドの和音にたどり着くという、いささかしつこい部分。パーヴォは、その3小節目(第41小節)の頭(2分36秒のところ)で、すっと音量を落とし後半2小節でクレッシェンドして、テーマの入り口への上り坂を作っています。楽譜にはこんな事書いていない(「常にフォルティシモ」とあります)し、あまり聞いたことないやり方です。初めてかも。ちなみに、第1楽章のコーダでも同じこの音量の上げ下げをやっております。

もう一つ。同じ第1楽章の展開部に入ってからしばらくして、ヴァイオリンとチェロだけになった後にフルートがタララッ、タララッと入ってテーマが導かれ、ヴァイオリンがニ長調で奏でる叙情的な旋律(第221小節、7分辺りのところから)を木管がそしてもう1回ヴァイオリンが、と繰り返しながら盛り上がっていくところ(すみません、ややこしい書き方で)があります。この旋律、最初に出るときと木管が繰り返すときには、それぞれその3小節目の最初の音に装飾音(前打音)がついています(3回目以降には付いていません)。これをパーヴォは、最初のヴァイオリンで出るときは長前打音、2度目の木管で出るときは短前打音、というなかなか変わった処理をしています(短前打音とか長前打音についてはこちら)。同じ記譜でも時代や作曲家によって装飾音の処理の仕方は異なりますが、ここは、短前打音として奏するのが圧倒的に多いと思う(手近にあった10種類ほどを確認しましたが、ザンデルリンク、岩城が長前打音でしたが、ベーム、モントゥー、ケンペ、コンヴィチュニー、朝比奈、クリュイタンス、ラトル、ブロムシュテット、シフ、ブリュッヘンは短前打音でした)のですが、1回目と2回目で処理を変えるというのは、初めて耳にしました。
和音との関係で変えているのか、さもなくば、長→短→装飾無し、という変化のプロセスとして捉えているのでしょうか。この辺、指揮者に訊いてみたいところです。

とにかく、この演奏、上に上げたような細かいワザを多数繰り出しておりますし、楽想によって音の種類も本当に千変万化して非常に丁寧な仕上げもあって、とても楽しめます。

が、ちょっと小細工に走っているなぁ、という感じがぬぐえないのですねぇ、ワタクシは。もちろんこのようなアプローチもありですし、それはそれで良いのですが、もっと堂々と行けばいいのになぁ、とつい思ってしまいます。ベートーヴェンは難しい。

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