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2007.07.11

クラシック音楽と本さえあれば

坂本くんのところで、「考える人」の標記特集号が取り上げられていました。

そう、ワタクシも、先々週だったかのNHK、ETVスペシャル(だったかな)での堀江敏幸氏がインタビュアーとなった吉田秀和氏の番組を熱心に見た口ですが、こっちの雑誌の方は読み始めるまで同じ一つのインタビューを素材にしたものだということに気がつきませんでした。

ただ、坂本くんも指摘するように、同じ素材を基にしたこの2つの作品(?)、かなり違う趣になっています。まあ、テレビと活字だから違うのは当たり前ですが。

内容的な意味での情報量の多さは雑誌版に軍配が上がります。わざわざ雑誌の方には、「放送で取り上げられなかった部分も含めて再構成」と注記されているくらいです。必然的に内容のつっこみ度は雑誌の方が深く、テレビ版はやや薄っぺらなものに思えてしまいます。もしかしたら、メディアとしての質の違いによるものかもしれませんが。

ですが、彼の語り口、リズム、間、抑揚といったものは、雑誌では残念ながら消えてしまっているのもまた事実です。たとえば、渡米、渡欧した当時の冷戦状況を語るくだり、「アメリカは、ラジオ放送を通じて、それ(東欧諸国におけるソ連への抵抗)をけしかけ、今にも助けに来るようなことを言っていたが、実際は決して助けにはこなかった。そんなことをしたら、確実に第三次世界大戦を始めることになっちゃう。」との発言。こうした活字の羅列は、当時のヨーロッパの置かれた状況、そこに生きる人々の閉塞感、を淡々としながらも心にしみる語り口で伝えたものとは、もはや別物となっていると言ってもよいでしょう。

しかし、先にテレビで見た人は、幸運なことに、すでにそれを聞いてしまっているわけで、活字を読んでもそれが聞こえてくるわけです。だから、このインタビューは、両様接することで非常に豊かになるものだと思います。まあ、必ずしも、これそのものを聞いていなくても、普段ラジオで吉田氏の語りに親しんでいる人にも聞こえてくるのかもしれません。

そして、この吉田氏の語りと文章の関連の話は、実は、このインタビューで語られるトピックの一つとなっています。「名曲の楽しみ」での語りの実践は、文章にリズムを与える修練になっている、とのことです。

この、内容と形式が呼応しあうインタビュー、なかなか見事です。

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Comments

コメントありがとうございます。
そうでしたね。>名曲の楽しみ。

いつの間にか土曜の夜という時間帯に移っていて、ここのところ聞いていなかったのですが、すっかり、あの声は耳に残っています。

Posted by: 亭主 | 2007.07.13 at 07:32 AM

こんにちは。
仰る通り、テレビ番組では吉田秀和氏の、あの独特の「語り口」も魅力的でしたね。
「語り口」といえば、雑誌の方の対談では、ラジオのレギュラー番組の冒頭で「名曲のたのしみ。吉田秀和。」と言うだけなのも、彼なりの計算、こだわりがあってのことだと書いてありましたね。

Posted by: おかか1968 | 2007.07.11 at 08:01 AM

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