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2007.07.05

極北のブラームス

Kreafaこんなタイトルでも、涼しげな演奏ではありません。まあ、このコンビだったらそうはならないだろうことは、明らかなのですが。

先日、同じ職場のクラシック・オタクの尊敬する先輩と、シューベルトのソナタの話になりました。「やはり『彼岸』が見えないとダメでしょう」と言うワタクシに、先輩は「そうすると、アレか、やっぱりアファナシエフか」とおっしゃいました。まあ、「彼岸」は内田とかグルダで、アファナシエフはむしろ「異界」ではないかとは思うものの、彼のシューベルトは好きです、ワタクシ。特に最後の変ロ長調のソナタ。

クレーメルは、パリで聞いたアルヘリッチとのデュオが絶品で、最初にこの人を聞いたときには、こんな風になるなんてまったく分からなかったなぁ、というか、それはその頃こっちが如何に聴く力がなかったかだなぁ、などと思ったのも割りと最近のことでした。

で、CD棚の片づけをしていたときに、ふとこれが目に止まり、久しぶりに聞いてみようと思った次第です。買ったのはずいぶん前で一通りは聞いたけれど、あの頃から今までにずいぶんと色々ブラームスのソナタも聞いたしな、というわけです。

テンポは基本的にとても遅く、沈潜系です。加えてクレーメルは息も絶え絶えという趣のかすれた音を(もちろん表現の一環として)随所で発して、なんというか、元気のいい演奏と評する人がいないことだけは確実です。そのあまりに晦渋な音楽に聴くのが辛くなるか、テンポの遅さに辟易するというのが、普通の感覚でしょう。かくいうワタクシも、これを愛聴盤の枠に入れてこなかったことを白状いたします。ちなみに、3曲そろった音盤の一押しは、ヘッツェルのものです。

でも、今回聞いてこのクレーメル/アファナシエフ盤、なかなか良いじゃないか、と思いました。昔に比べると曲がより自分に入っているので、流れない進まない演奏でも耐えられる(といって我慢をして聴いているわけではまったく無いのですが)のも変化の一因からかもしれません。

テンポが遅くても単位時間当たりの情報量が減るわけではなく、表現はどんどん濃密になっているわけです。そうすると、聴いたあとに不思議な充足感があるんです。昔この演奏を評するのに「アンチクライマックス」という言葉を使っているのを見た記憶がありますが(吉田秀和だったかも)、その言葉の正しい意味は分からないものの、言いえて妙です。普通の意味での盛り上がりや勢い、輝きはないのですが、それでもある種の高揚感(かなり特殊なものですが)があるのです。

まあ、怖いもの見たさの癖のある方にはお勧めとしておくのが無難ではあるでしょう。


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Comments

pfaelzerwein さま
コメントありがとうございます。
これの録音は87年です。たしかに最近のクレーメルは、プロデューサー的活動が目立っているような気もしますね。

Posted by: 亭主 | 2007.07.08 at 12:37 AM

この録音は聞いたことがなくその録音年代が判らないのですが、このコンビで活躍していた頃が、このヴァイオリニストの頂点でなかったかなと思います。最近は、興味あるプログラムや演奏をしていなくて聞いていないので判りませんが。

この演奏家が西側に出てきてから、長く聞いていますが、特に弓などを変えてからの演奏は、この傾向に行き付く事が予想されていました。

因みにブラームスは、ズッカーマン・バレンボイムを私は手元に置いています。

Posted by: pfaelzerwein | 2007.07.06 at 06:02 AM

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