ジョルダンのモーツァルト
ジョルダンのモーツァルト/交響曲第34,35,36番です。手兵の一つだったアンサンブル・オルケストラル・ドゥ・パリを指揮してのものです。
これ、とても良いです。
ジョルダンらしい、すべての声部が見通しよく聞こえてくる、時には豪放時には優美、繊細で丁寧で、そして温かい血の通った演奏です。
すべてがあるべき姿でそこにある、とでも言いましょうか。モーツァルトのように、ニュアンスがめまぐるしく変わる音楽でこれが実現されると、快感であります。
いずれの曲にも共通して言えるのは、鋭敏な小編成の楽団によってはいても、ピリオド系とは一線を画する点です。もちろん、厳しい表情を見せる部分もありますが、基本的には柔らかい温もりのある音で、必要とあらば非常に豊かな響きを出すところもあります。たとえば34番の1楽章。そして、同じ曲の2楽章は、羽毛のように柔らかく、細かくはあっても自然な表情に満ちた、とてもチャーミングな演奏の好例です。
「ハフナー」冒頭のはっしと打ち込まれるような思い切りの良い跳躍音型とその後に現れるおずおずとしたためらうようなたたずまいの対比がこんなに良く描かれた演奏は、ありそうでいて、実際には接することの少ないものです。展開部の若干奇怪な様相の部分では、ホルンの低音の保持が効いていますし、バスの着実な歩みには意味深さを感じます。と、こんな感じで挙げていけばきりがないのですが、しなやかに歌い、いたずらっぽく跳ね回り、伸びやかに喜ぶ終楽章は、モーツァルトも聴いたら喜ぶだろうなぁ、などと思ってしまいます。
この曲の録音というと、モントゥーが晩年の64年に北ドイツ放送響と遺したものも素晴らしいのですが、このジョルダン盤、色々な意味でのバランスの良さ、溌剌とした生命力の横溢など、モントゥーの良いところをいくつも継承しているものです。
36番の演奏に触れないのは、これ以上贅言を尽くしても仕方ないからで、決して演奏が落ちるとかそういうことではありません。
ジョルダンのモーツァルト、素晴らしいです。
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