渡邊護「モーツァルトの歌劇」
渡辺護氏の訃報が1月以上遅れで流れてきたのには、少々寂しい感じがしました。ワーグナーの解説や対訳などで、もうずいぶん前から大家になっていらっしゃったわけですが、英国にお住まいということがあるにしても、と思いました。
氏は、ここに掲げた「モーツァルトの歌劇」を1956年に上梓されていますが、ワタクシは、これをウィーンで見つけました。90年代中頃のことだったと思います。
ウィーンのシュターツオパーの建物にはARCADIAという音楽ショップがあるのは、ご存じの方も多いでしょう。建物を正面から見て右側の脇です。歌劇場内のロビーにも出店があって、演目のCDやら出演歌手のプロマイド、さらには公園のポスターなど売っています。
音楽書も置いてあるのですが、そのとき、なぜか日本語の背表紙、しかも明らかに新刊本ではないものが目に入ったのです。確かにここには古本も置いてあります。それにしても、こんなところで日本で出版された本に出会うのも珍しいなぁ、と手にとってぱらぱらと中を見ると、裏表紙裏になにやら書いてあるではありませんか。
「エリック・ウェルバ教授に 渡邊護 1959年12月7日 葉山にて」
これ、リートの伴奏で特に名高く、名歌手との録音も多く、ウィーンの国立音楽大学にあって多くの後進も育てたエリック・ウェルバ教授に、渡邊氏が贈ったものだったのです。ご両所に面識があったことは想像に難くないところですが、非常に親しい間柄であったのかどうかということについては、ワタクシには何も分かりません。また、この本、ドイツ語で題名だけはつけられていますが、本文内容は日本語のみ。ウェルバ教授は、おそらくご自分でこの本の内容をお読みになることはできなかったでしょう。すると、何かの記念にでも贈ったものなのでしょうか。もう、その事情を探るすべもワタクシにはありません。
更に不思議な縁のようなものを感じつつ、もちろん求めました。価格は覚えていませんが、高いものではありませんでした。
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