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2007.11.17

ルイージ/ドレスデン@NHKホール

来日中のドレスデン国立歌劇場管弦楽団、ルイージの指揮でNHK音楽祭参加公演(?)を聞いてきました。ワタクシ、ルイージは現役ではもっとも好きな指揮者と公言しておりますが、でも、この日の演奏会は心ゆくまで満足するというわけにはいきませんでした。NHKホールの3階席で聞いたためにドレスデンの響きがそれほどは堪能できなかったせいおあるかと思いますが、それにしても残念でした。

曲目は、前半がウェーバー「魔弾の射手」序曲、ワーグナー「さまよえるオランダ人」から「外国のお客を迎えておくれ」(バス:クルト・リドル)、ウェーバー「オイリアンテ」序曲、R.シュトラウス「ダナエの愛」から第3幕の間奏曲~フィナーレ(バリトン:ハンス=ヨアヒム・ケテルセン)。後半はワーグナー「ワルキューレ」第1幕(ソプラノ:エヴリン・ヘルリツィウス、テノール:ヴォルフガング・シュミット、バス:クルト・リドル)。

「魔弾の射手」の弦の滋味あふれる音はさすが(巨大ホールの最上階に伝わる情報を想像力によりだいぶ補正して)でしたし、冒頭のホルンのソリが始まって3小節目のアウフタクトの4番ホルンのソ→ドがくっきりと聞こえたのとか、モルト・ヴィヴァーチェになって一段落付いたところのホルンの思い切った強奏とか、豊かな歌い方とか、随所にルイージらしいなぁと思うところは多々ありました。が、この曲の大きなポイントである総休止、ヴァイオリンの湧き上がるようなフレーズに続く集結部での沸き立つような祝福感が、残念ながら表れませんでした。まあ、ドレスデンの人たちにとっては完全にレパートリーなのでしょうし、この手のコンサートの1曲目ですから。ということで全体としてはまあまあ、可もなく不可もなく。期待が大き過ぎたのかもしれませんが。

続く「オランダ人」は、いくら出てきて1曲目とは言ってもリドルの音程がひどくって話になりません。曲間に臨席の知人と顔を見合わせ、フンディングは大丈夫か、更にオックスは大丈夫か、などと話してしまいました。リドルのオックスと言えば、98-99のシーズンにドレスデンで見たのですが、その時主役のマルシャリンの不調で出てきた代役がデノケで、こんな素晴らしい歌手がいるのかと驚いたものでした。あれからもう8年ですが、今回の初来日がキャンセルになったのは残念ですねぇ。

3曲目の「オイリアンテ」の感想は「魔弾」とほぼ同じ。ということは、このコンサートの第1部は、まあ、それほど真剣に練習をしなくてもすむ曲による「前座」ということなのかなぁ、と感じ始めました。

ですが、「ダナエの愛」は良かったです。このオーケストラのシュトラウスにぴったりの色調、色彩をうまく使って本当に豊かな音楽をルイージは引き出していたと思います。歌手は今ひとつではありましたが。

ということで、休憩後が本気モードになるのかなと期待して望んだ後半。確かに演奏のテンションは高く、前半とは違いました。オケは甘くやさしく歌い、激しく荒れ狂い、ルイージもそれぞれの場面にふさわしい音楽を作っていました。
歌手も、ジークリンデのヘルツィリウス(ローマ人のような名前)がなかなか表現力歌唱共に高水準でした。ただ、この人は、もう少し暗め低めの役柄の方が向いているのではないかという気はします。ジークリンデとしてはねぇ、という無い物ねだりは少しあります。フンディングのリドルは前半とはうってかわって好調だったのは、声出しが済んだのか曲との適正があるのかよく分かりませんが、まあとにかく良かったです。ジークムントのシュミットはヘルデンテノール不在の当節、色々なところでお目にかかりますが、いつもワタクシの感想は同じです。声が固くて汚い。こんな声でどうなるんだろうと歌い出しには思うのですが、最後までもつことはもってしまう。不思議な歌手です。今夜はかなり高いところが苦しそうな部分はありましたが、まあ、熱唱って言うんでしょうか、こういうの。ワタクシは苦手です。あ、ただ、ジークムントなんだからと甘く歌おうと試み(愛を語るところとか)、ある程度の成果を上げていたことは書いておかないとフェアではないかも。

ということで、前半よりは良かったのですが、ワタクシ、実はこの演奏に諸手を挙げて満足ということにはならなかったのです。それは、多分(少なくとも現時点での)ルイージの音楽作りとワーグナーの音楽(にこちらが求めるもの)とのギャップにあるのではないかと思ってしまいました。ルイージは、その場その場で音楽が細かく素早く変化を要求するときに、俊敏かつやや強引な持って行き方でそれを実現する手腕にとても秀でています。そして、その甘い、豊かな、暗い、静謐な、激しい、といった異なった表情をなかなか大きな幅で表現することが得意です。これは、プッチーニやシュトラウス、さらにはマーラーでは本当に大きな武器になります。が、ワーグナーではこの鋭敏さが時には音楽の柄の小ささとなってしまうことがあるように思うのです。トータルとしてのどっしり腰を据えた(たとえ鈍重と感じられることがあったとしても)音楽作りが、なにか巨大なものを聞いたという満足感を与えるためには必要ではないかと思うのですが、ルイージのこのアプローチではなかなかそうはならない。引き出す響き自体が軽いとか、音の重心が高い、あるいはテンポが速すぎるという点がダメなのだという意見もあると思います。これについては、ワタクシはそれほど気にはなりません。クリュイタンスのワーグナーとか好きですし。それよりも、コセコセしたものになっている点が問題であるように感じました。

まあ、まだ40代なわけですから、ここのところは、年をとるに従って、そういうアプローチも身につける(あるいは、アプローチは変えずとも作品の大きさを感じさせる演奏をする)ことを期待したいところです。

ということで、結局「ダナエの愛」が一番良かったなぁ、と。

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Comments

コメントありがとうございます。
結構、自分は満足できなかったのに、ブログを徘徊していると満足エントリが多くって、う~んと思っていたところに、rx1206さんのエントリを読んで、そう、そうだよね、と共感した次第です。こちらこそ、よろしくお願いします。

Posted by: 亭主 | 2007.11.18 at 09:41 PM

ガーター亭亭主殿、はじめまして、rx_1206です。
先日はコメント頂きありがとうございました。
大変音楽に造詣の深い方からコメント頂き感激です。
今後共、宜しくお願い致します。

Posted by: rx_1206 | 2007.11.18 at 08:00 PM

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