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2007.11.29

カペレの「参加公演」または日比谷公会堂について

東京アカデミッシェカペレの定期演奏会、今回は巷で話題の日露友好ショスタコーヴィチ交響曲全曲演奏プロジェクト2007「参加公演」と銘打って行われました。ですから当然指揮は井上ミッチー、オール・ショスタコーヴィチ・プログラムで、「祝典序曲」、「ステージ・オーケストラの為の組曲」より5曲、「森の歌」。

本体のプロジェクトの方は、10番と13番の回に行きましたが、ショスタコーヴィチ苦手病から癒えつつあるワタクシをショスタコーヴィチ好きという病へ引きずり込みそうな、なかなかのものでした。残る4番、8番、15番は行ければなぁと思っております。

ところで、日比谷公会堂はワタクシにとっては「久しぶり」です。「初めて」か「懐かしい」かによって世代が明らかになるようですが、音楽会通いを始めた中学生の頃には既に東京文化会館があって主力はそっちという感がありました。けれど、ワタクシの2度目のコンサートはここで、尾高/東フィルの「新世界より」でした(最初は、なぜかクラリネットのド・ペイエが都響を指揮したモーツァルトのコンサート@杉並公会堂)。ケフェレックの来日公演もここであったし、ケンプが新しいピアノの弾き初めをしたなんてこと(行かなかったけれど)も記憶に残っています。
この会場の音響ではマーラー(9番)をお聴かせすることは自分の芸術的良心から出来ない、とか何とか言ってクーベリック/バイエルン放響が文化会館でのプログラムと全取っ替えしたという事件(?)は鮮烈でした。当時、音響の善し悪しなんてろくに考えもしなかったワタクシは、「日比谷の音は悪いのだ」(クーベリック先生が言ってプログラム変更までしてしまうのだから間違いない)と刻み込まれたのでした。だからといって敬遠したりはしなかったけれど。
そのうち、サントリー・ホールが出来て、池袋の芸術劇場、オーチャード・ホール、すみだトリフォニー、初台のオペラ・シティ等々(順不同)が続き、日比谷公会堂からは足が遠のいていたのは事実です、と言うより、ここでの音楽会自体があまり無くなっていったのでした。でも、それは、音響のせいもあるかもしれないけれど、コンサートが、休憩にはワインでも飲んで、という広い意味での「社交の一環」化にそぐわない日比谷の設備と雰囲気というのが理由の一つではないかと。

だって、パリで鍛えてきた(?)身にとっては、日比谷公会堂の音は全然悪くないです。確かにデッドで直接音がきまくり(それがショスタコーヴィチの音楽と合っているという意見も肯けるものがあります)なのは、間接音たっぷりで豊かな感じのする日本の最近のコンサート会場とはだいぶ違うとは思いますが。評判が悪いのは「残響神話」の犠牲かもしれません。今になって思うのは、クーベリックは箱の大きさを問題にしたのではないか、ということ。サントリー・ホールだって、北ドイツ放響の連中は、朝比奈御大に「この大きさのホールでは自分たちが全力で吹いてしまったら音量が過多になるのではないか」とか言ったという話を読んだ記憶があります(御大は、そんなことはないので100%吹けと指示した由)。ドイツのオケが日比谷で思いっきりマーラーを鳴らしてしまうのには無理がある。

実は、それを思ったのは「祝典序曲」と「森の歌」で十数人の金管のバンダがクライマックスで登場した時です。この大きさの空間(狭い)でのこれだけの飽和したパンパンの音に、ワタクシは音圧そのものに圧倒されて身がすくむように感じ、何も考えられない状態となってしまいました。この思考停止状態に、ワタクシはスターリン賛美を思いました。ショスタコーヴィチの音楽は怖いです。ミッチーが「ショスタコーヴィチの音楽が多面的なのと同じように、人間というものも色々は面があって、独裁者も案外いい人でピアノが上手かったり、でも何百万人も殺しているんです」という言葉を思い出しました。今回のバンダは誰のアイデアかは知りませんが、圧倒的な音響そのものもメッセージ性があるように思えました。

ミッチーは、日比谷公会堂は講演会(というと浅沼委員長の事件を思い出したりします)にばかり使われているそうで、それはもったいないと言います。まったくその通り。ショスタコーヴィチだけでなく、ピリオドアプローチでの古典派以前の音楽、バロックオペラとかここでやったら良いのに。きっとマッチしますよ。

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Comments

はろるどさま
椅子は辛かったですか。私は大丈夫でした。これもパリで鍛えたおかげかも。オペラコミークなんて、本当にひどいですからね。

Posted by: 亭主 | 2007.11.30 at 01:31 AM

J.D.さま
コメントありがとうございました。本当はコンプリート目指していたんですが、なかなか野暮用でそれも果たせず。でも、来月も行きます。こんなに、なんというか色々な意味で潔い演奏会も珍しい(だけでなく、もちろん音楽的にも素晴らしい)ですから。

Posted by: 亭主 | 2007.11.30 at 01:29 AM

はじめまして。TBを辿って参りました。
私は日比谷公会堂で音楽を聴いたのは初めてだったのですが、
確かにデッドではあるものの、素直な直接音の音響(?)が逆に新鮮に感じられました。ただ椅子は少々つらいですね。手直しすれば、まだまだコンサートでも使える良いホールになるような気もします。

Posted by: はろるど | 2007.11.29 at 10:49 PM

こんにちは。
「嵯峨野にわか住人の日記」というブログやってますJ.D.です。
TBありがとうございました。
私の方からココログへはTB弾かれてしまいますので、
コメントを残しにお邪魔しました。

亭主さんもミッチーのショスタコ・プロジェクトに足を運んだそうで、
とても羨ましいかぎりです。どうして京都でやってくれへんのか(涙)。
感想、とても興味深く拝見しました。
日比谷公会堂の音響がデッドだという話はあちこちで
見かけましたが、ハコ自体はそれほど大きくないようですので、
使い方というか音楽の性質しだいなんでしょうね。
少なくともショスタコーヴィチには合ってそうな印象を受けました。
来月も行かれますか?感想楽しみにしています。

Posted by: J.D. | 2007.11.29 at 09:01 AM

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