クァルテット・ウェンズデイ/クァルテット・エクセルシオ
もう1週間以上前のことになりますが、武満とクセナキスを並べたクァルテット・エクセルシオの演奏会@第一生命ホール。圧倒的なものでした。
生とCDを比較しても仕方ないのですが、当夜の演奏曲を一通り(別の演奏でも)聞き返してから書こうと思って日が経ってしまいました。未だにやっていませんが。
演奏されたのは、武満はランドスケープⅠ(1960)、ア・ウェイ・ア・ローン(1980)、アントゥル=タン(1986)。クセナキスはテトラス(1983)とテトラ(1990)。アントゥル=タンのオーボエは古部賢一。
ワタクシは特に現代音楽ファンというわけではなく、これらの曲は生で聴くのはいずれも初めて。録音でも聞いたことがあるのはたぶんア・ウェイ・ア・ローンだけ。特にクセナキスは、前衛の中でも異端とか建築家兼作曲家とか、そういう恐ろしげな情報を得る中、もう30年来敬遠し続けてきたもので、ちょっと戦々恐々として演奏会に臨んだのでした。
1曲目はランドスケープⅠ。弦楽のためのレクイエムと通ずる厳しい時代?の武満でした。この日の外気温にも似た冴え冴えとした感覚がなかなか心地よいものでした。2曲目はテトラ。聞いて思ったのは、なんだか「羊羹」みたいな音楽だなぁ、と。それも、柔な水ようかんなんかではなく、堂々虎屋の大棹「夜の梅」のような感じでした。みっちりつまっている密度の高い音楽だという印象を受けました。この2曲の後のア・ウェイ・ア・ローンは、12音以前のシェーンベルクのようなむせかえる程の(別の意味で)濃密な音楽。う~ん、後期武満が盛んに批判された理由も分かるような気が。
ココまでで休憩です。
さて、後半1曲目はクセナキス2曲目のテトラス。もちろん初めて聞きます。で、これが当夜の白眉でした。部分部分の奏法やら音楽やらは多種多様で、「クラシックの愛好家」に言わせたら特殊奏法なんていうのは超えてしまって、雑音に聞こえて怒り出すか笑い出すかしかねないものなのですが、この演奏、それがなぜそこにあるのか、ということが何となく分かってしまうようなものなのです。全体の見通しがすっきりつくと言うか。まあ、もちろん「何となく」なんですけれど、そんな気にさせられるというのは、それぞれの部分がちゃんと弾けている(いや、それがこの曲の場合生半可な大変さではないことは、これは初めてでも分かりました)からこそなのでしょう。「整った」演奏で構成感があり、不思議に「古典的」な感じを受けました。こんな「変な」曲なのにそんな感じを受けてしまうというのは、本当に驚きです。
この衝撃の後では、武満のロマンティックなアントゥル=タンは、ちょっと分が悪かった。
いやぁ、すごかったです。
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