「舞台裏の神々」
この、指揮者とかオーケストラの楽員、器楽奏者、歌手たちのエピソード集、存在は知っていましたが、この間買って通読しました。エピソード自体は、面白がれるものも多かったのですが、読み終わって、楽しかった、という風にはなりませんでした。残念。
一つには、著者の視線に愛が感じられない場合が多いこと。文章のせいもあるかもしれませんが、こういう小話集みたいなものは、語る対象をからかいはしても温かく見るという雰囲気がないと楽しめないと思うのです。それが「あの「大指揮者」が実はこんなにひどい奴なんだ」と得々と語るようでは見苦しく感じられます。
2点目は、訳のまずさ。原文にあたっているわけでもない(そもそもドイツ語は読めません)のに、こんなことを言うのはなんですが、用語の選択など堅すぎるように思います。もっとも、それが原著のねらっているところだとすると、それは訳者の責任ではありませんが。しかし、それにしても、「オネーギン」上演時のエピソード(125ページ)などは、想像力をたくましくしてもちょっと飲み込めない文章が出てきて往生してしまいました。
最後に、事実関係で引っかかるところがあること。訳者も指摘しているように日本での公演で「バラの騎士」が「バラの騎手」と誤解されていた(19ページ)とか、バーンスタインがベルリン・フィルを指揮したマーラーの9番が放送されずカラヤンが個人用にテープを隠し持っていた(82ページ)とか、思い違いというか思いこみによる間違いが本書にはあります。そうなると、他のエピソードも途端に彼の(捏造とは言いませんが)勘違いだと思えてきてしまうのです。
まあ、小話集というか噂話集ですから、実際どうだったかということを検証するようなものではありませんが、うまく「そうかぁ、なるほど」とニヤリとさせてくれなければ。
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 「モーツァルトのドン・ジョヴァンニ」(2008.04.08)
- 「舞台裏の神々」(2008.03.16)
- ねにもつタイプ(2008.03.11)
- グルダの真実(2008.03.06)
- 大奥(よしながふみ)(2008.01.14)
「音楽」カテゴリの記事
- タローのショパン前奏曲集(2008.04.27)
- アレクサンドル・タロー@王子ホール(2007.10.27)
- 「モーツァルトのドン・ジョヴァンニ」(2008.04.08)
- 音楽は何も表現しない(2008.03.29)
- ウィーン・オペラが1面を飾った頃(2008.03.23)
TrackBack
TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/10092/40515232
Listed below are links to weblogs that reference 「舞台裏の神々」:


Comments