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2008.04.27

タローのショパン前奏曲集

このアルバム、山尾さんのナント便りで知って以来国内で手に入る日を待っておりました。といっても、実はこちらで入手可能になったことを知って買い求めてからも、エントリーにするまでに随分時間が経ってしまいました。

繊細なショパンです。シューベルトかと思ってしまうくらいの彼岸の見え方なんですが、それは、タローがライナーノートに、この曲集は暴力と死に貫かれている、と書いているのを読んでしまったせいなのかもしれません。静謐感の中に漂う無情さ、そして時には包み込むような暖かさは、いつかそこへ回帰していく場所のようでもあります。ピアニシモが危ないくらい美しいんですよね。

それにしても、随分とマニエリスティックでもあります。3番の音の粒立ちの軽やかさは偏執的にleggieramenteだし、7番(太田胃散)のアウフタクトをこんなにたっぷりと引き延ばしてしまったり、16番の第32小節の2泊目の裏からの下降音型が妙に強調されたり、と色々なことが起きます。

ワタクシが一番印象に残ったのは、17番です。CDのライナーでの各曲の一言解説だと、多くが「甘美な曲」とかなんとか片づけられてしまっている(まあ字数の制限もあるわけでしょうが)のですが、タローのこの演奏は、怖いんです。第65小節からのpp、sotto voce で冒頭の旋律(たしかに優美です)が戻ってくるところ、2小節ごとにとても低い変イの音がフォルツァンドで鳴り始めると甘美さは遠くに退いてしまって、この不吉な地獄の底からの弔鐘のような低音こそが真実で、それまでの甘さなどは仮の夢に過ぎなかった、などというように思わされてしまいます。旋律部が本当にソット・ヴォーチェになっていることともあるんですが。

フォルツァンドといえば、18曲の9~12小節の叩きつけるような和音の弾き方も、なかなか激しいです。

前奏曲集って、短い曲、長い曲、静かな曲、激しい曲、明るい曲、暗い曲、色々な性格のそれぞれの曲で、全体が一つの宇宙になっているような感じを受けるんですが、聴きながら、しきりにシューベルトの連作歌曲集を思ってしまいました。そんな印象を持ったのは、タローの演奏のおかげでしょう、きっと。

ところで、1曲目の第27小節、急に音が切れるような、軽くなるような、クラッとくるところがあるんですが、これは何なんでしょう。識者のご教示をお願いしたいところです。

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Tracked on 2008.04.27 at 02:03 AM

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