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2008.12.26

バスジャック

Busjack最近果たせていないのですが、8月31日は、個人的に「ゆく夏を惜しむ日」と定めて夏休みをとることにしていました。夏の終わりは、一年で一番喪失感を感じる日だと思います。
この「バスジャック」に収められた「送る夏」という小説は、まさにそういう空気の作品です。淡々とした筆致で静かに「日常の中で大切なものを失いながら生きていくこと」について書かれています。好きですねぇ。12月に読んでしまいましたが。
動物園の檻を、人が生きていく上で逃れることができないある種の束縛感のメタファーとして描き、しかも設定がSFでエンターテイメントな「動物園」も名作です。
それにしても、不思議な本です。2005年の「小説すばる」の2月号から9月号まで(5月号を除く)に連載された7本が収録(そして11月に単行本として出版)されているのですが、とても抒情的な作品あり、奇想を競うような作品あり、長さも3ページから98ページと大変バラエティに富んでいます。もしかすると、作者が色々な引き出しを開けてみせるということがテーマの連載&出版だったのかもしれません。

文庫版(先月出版)の帯には「とにかく・・・・・・すごい本です。そうとしか言えません。もう読んでもらうしかありません。たとえば41ページからなんて、いかがでしょうか?」という惹句が踊っていますが、こういう紹介の仕方はかなり正解かもと思います。その41ページからの作品が最短のもので、心温まるものなのですが、そういう本かと思うと期待は(良い意味で)裏切られます。多彩なもののたとえに「万華鏡のような」と言いますが、ああいうある意味での均質性の中の多彩さですらないのです。

しかし、「バスジャック」が表題作となっているのには、ワタクシはあまり賛成できません。本のタイトルとしては、たしかに一番「何だろう」と思わせるものではありますが、これは必ずしもこの作品集で一番良いものだとは思えないのですが。

日本を留守にしていた間に、こんな作家がデビューしていたんだなぁ、という「発見」する喜びに浸りました。

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