パーヴォ・ヤルヴィのベートーヴェン完結
ヤルヴィのベートーヴェン、第4番のことを書いたのは2年前になりますが、このたびの第9をもって交響曲全集の完結となりました。
ちょっと前に聴いたのですが、なんだか聞いたことのない音が沢山あって、アレレとなりました。第1楽章の2分くらい経ったところの木管とか、第4楽章の「歓喜」のテーマに最初の方で絡むファゴットのリズムとか、それにそこではどうも第2ファゴットがコントラバスと同じことやっているみたいだし、ホルンの和音が残ってシンコペーションでリズムを取るところはなんかタイで一部つながれている。ちょっと面食らって調べたりしました。
で、もう多くの人はよくご存じなんでしょうが、これってベーレンライター版をやってるってだけのことのようですね。出版されてから10年も経つわけですが、考えてみればまともに聴くのは初めてだったのかもしれません。いや、ジンマンにしてもラトゥルにしてもCDを持ってはいるんですが(汗)。
藤本一子氏のベーレンライター版の第9に関する論文(とりあえず25ページ目からの慣例版との違い一覧が便利)
ということで、上のリンク先で第4番の前打音の扱いについて書いたんですが、これは楽譜を見ないといけないなぁ、と反省しました。
さて、肝心の演奏は、憑かれたように前へ前へと進んでいく第1楽章がとても良かったです。ちゃんと楽器が鳴っていないような気がするところもありましたが、何というのか「ベートーヴェン」らしかったです。ただ、最後に近く、木管の短いカデンツァ風な部分に導かれて、低弦がクロマティックな動きを始め、うねって盛り上がって集結に到るところの、謎めいた雰囲気、おどろおどろしさは、随分と物足りなかった。そういうものを求めてはいけないのかもしれませんが、ここがそうならないと第9を聴いた気にならないんですよねぇ、ワタクシは。
それに比べると第2楽章は随分とおとなしいモノでした。第1楽章の熱さに比べるとちょっと肩すかしを食らった感じ。第3楽章は、う~ん、さすがにちょっと速すぎではないかなぁ。これでは音楽を堪能できない感を受けました。第4楽章は力がありました。ワタクシ、器楽だけで歓喜のテーマが盛り上がっていく途中、トランペットとかが入ってテュッティになる直前のヴィオラとチェロの声部がとても好きで、ここが良く演奏されると無限に音楽が広がって伸びていくような印象を持つことができるのですが、この演奏にはそれがありました。それから、「兄弟」とか「人間」っていう言葉にやたらとアクセントが付く解釈だなぁ、と思ったのですが、これも楽譜がそうなっているらしいですね。
ということで、他の今時の第9もちゃんと聴こうかな、と殊勝な気持ちにさせられました。
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