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2010.01.18

杉浦非水の眼と手@宇都宮美術館

Rimg0008宇都宮美術館で今日まで開催されていた「杉浦非水の眼と手」という展覧会に行ってきました。栃木の方に行く用事があったので、何かないかなぁと思って探してみたところ、これに当たったというわけです。栃木県立美術館というのも同じ宇都宮市内にありましたが、こちらは展示替えで閉館中ということでした。宇都宮美術館は駅から遠くバスで25分かかるというロケーションだったのですが、その至近にたまたま中学からの友人が住んでいることに気が付き連絡を取って車で迎えに来てもらっちゃいました(会うのは25年ぶりくらいだったんですが(汗))。
森の中の美術館という感じで、展示スペースも十分、ゆったりとした感じで、屋外の庭の部分に彫刻展示などもあり、なかなか感じの良いところでした。

Chikatetsu1杉浦非水といえば、東京の営団地下鉄開業60周年のときのメトロカード(古い話ですな)に、創業時のポスター(左)が使われておりました。ワタクシはこれで、当時のモダンさに目を見開かされたのでした。
今日のN響アワーはたまたま「1928年パリ」というテーマでしたが、20年代って、パリに諸国の才能が集まって開花したのと同時にそれがパリから発信され、ベルリンとか東京とか国境を越えた最先端のネットワーク(というと言い過ぎか)が形成されていたんじゃないか、と思ったりします。
で、非水の名前はそれで記憶に残ったのですが、その後何を見るわけでもなくここまで来て、今回、それ以上の知識も何もなく宇都宮へ行ったのでした。

そんなアレですから、「非水といえばアールヌーヴォーと言われるが」なんて言われても、そうだったんだぁ、ワタクシの知っている非水はもっと「直線」なんだけど、というレベルだったんですが、それでもこの展覧会はとても楽しめました。

まずは日本画家として出発?したという経歴に驚き、三越のポスターやPR誌の表紙とかは確かにアールヌーヴォーだなぁ、と思い、ワタクシの馴染みのある地下鉄のポスターが創業時だけでなく萬世橋駅まで延伸したときのものも含め沢山あるんだと知り、ヤマサ醤油のポスター連作?も味があるなぁとか、これってメトロポリスかとかソ連のようだ(というか1930年代なのでまさに「インターナショナル」かと)とか、色々発見がありました。これはエッシャーだ!なんていうのもありました(ちなみに1926年の「図案集」所収なのでこっちが先)。

Hyakkaf1そして、「非水百花譜」という草花写生図には本当に驚かされました。まさに100枚の花の写生図の版画なのですが、これが壁一面に並んでいる様は壮観でした(天井に近いところまであったので一つ一つの鑑賞には難がありましたが)。で、精緻な写生なのですが、それを超えて非常になまめかしい、あるいはしょんぼりしている、というように花の心持ちといったものが表されているように錯覚してしまうほどのものでした。ランダムハウス講談社から本の形でまとめられた(左)ものがミュージアムショップに並んでいたので、図録と合わせてこれも買ってしまいました。
非水は絵手本を基に描くのを嫌い、実際にものを観察しそれを自分の絵とする「写生」の重要性を画学の徒の頃から意識し主張してきたとのことです。若冲にもそういうエピソードがあったような。

これらの時系列は、雑誌の表紙絵や挿絵そして三越の仕事を中心に活動していたのが明治末年から大正に入って少し、その後にこの「百花譜」がきて、関東大震災の時をまたぐ丸1年間洋行、昭和に入って数々のポスターということになります。そうそう洋行時に色々買い集めてきた彼の地のポスターなども展示されており、これも興味深かったです。ほんの小さなホテルの宣伝ラベル(?)のようなものの中にはカッサンドル風のものもあったりして。

ということで、ワタクシにとっては地下鉄ポスターの人だった杉浦非水の色々な側面、今世紀初頭の西洋での美術・デザインの潮流とその日本への影響&オリジナリティ、さらには雑誌の表紙に現れる当時の世相(「清朝遂に滅亡」なんてのもありました)などなど本当に面白い展覧会でした、残念ながら今日(17日)で終了してしまったのですが。

館のコレクションを順次?公開していく展示も進行しており、今出ているものの中ではやっぱりマグリットの「大家族」が目を引きました。

非常に充実した宇都宮行きでした。

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piongの飼い主が展覧したの?

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