沼尻竜典/TMP、小林沙羅 マーラー4番(シュタイン編室内楽版)
沼尻、トウキョウ・モーツァルトプレーヤーズ(TMP)のコンビでのマーラー4番の演奏会に行ってきました。三鷹市芸術文化センター風のホール。と言うと、600席あまりのあのホールや団体を御存知の方は、「4番にしたってマーラーはないだろう」と思われるかもしれません。
が、今回演奏されたのは、エルヴィン・シュタインが編曲した室内楽版でした。正確に言うと、弦楽器が各パート1人に編曲されているのを4-3-3-2-1に増強?して、ティンパニも追加した「TMP版」(と指揮者が解説で言っていました)です。管楽器はフルート、オーボエ、クラリネットが各1本だけ。ファゴット、ホルン、トランペットがいなくって、その代わりピアノとハルモニウムが入るという編成。打楽器はオリジナルどおりでハープはいません。クラリネットはバスクラとEsクラ?を持ち替え(計3本)、オーボエはイングリッシュホルンを持ち替え(ただ、3本楽器を使っていたんですが、もう1本は何なんだろう?)となかなかお忙し。その割にフルートはピッコロに持ち替えていなかったような。。。
先ほど、金管群の代わりにピアノとハルモニウム、と書きましたが、ソロの部分はクラリネットやオーボエに割り振られる部分もあり、色々な音色を駆使していらっしゃいました。
さて、このTMP版による演奏ですが、この大きさのホールでは十分な音量ですし、弦を若干増強したのも豊かな歌が流れてきて、ちょうど良かったと思います。何より少人数ですからたとえば弦楽四重奏みたいに一人一人が本当に全体のアンサンブルを聴きあって「音楽している」って感じ。それが伝わってきたのもとても良かったです。
自分の座る席からはチェロとコントラバスがよく見えた(対向配置)のですが、この3人、本当に音楽をやっているのが楽しくって仕方ない、という感じ。すごく「音楽的」でした。ちなみにチェロのトップの金子さんのブログはこちら。それからコントラバスは東フィル首席の黒木岩寿さんです。
加えて、弦が大人数だとどうしても音が多少濁ってしまうところがすっきりと合って、そうすると線の絡みが明晰になるし、転調による色合いの変化もよく分かるし、それから歌い方や細かな表情付け(かなり大胆なものも)がぴたっと決まるし、この編成のマーラーの4番、侮り難しと思わされました(ただ逆にちょっとしたずれがはっきり分かってしまうけれど)。
ティンパニが加わったのも良かったなぁ。N響の久保昌一さんが出ていましたが、この人数に合わせてうるさくならないようにすっと音量を下げつつも、アクセントは効かせて。指揮者が言うように、これはピアノでは寂しいですね。
4楽章のソロは小林沙羅さんというとても若いソプラノでした(ブログ)。澄んだよく響く声で変化する曲想を表情豊かに歌っていました。2階席からは1階空間での残響が付加された音になり、ストレートでなくなってしまったのが少し残念でしたが、またこの人は聞いてみたいです。今後更に伸びていくのが楽しみです。
そうそう、ソロは3楽章の最後でいきなりキラキラ盛り上がるところで入場してきました。その昔、若杉弘が東響との「復活」でソリスト2人を同じようなタイミングで入場させたのを思い出しました。沼尻氏も「舞台の人」ですねぇ。
休憩前にはジークフリート牧歌があったのですが、これも弦楽器は4-3-3-2-1で、管はオリジナル通りの数。昔ブーレーズが初演時と同じ?やはり小編成で録音した盤が出て、それを聞いたのは大管弦楽バリバリ好きな高校生(中学かも)だったので、なんだかつまらないと思ってしまいましたが、上にマーラについて書いたのと同じ魅力を感じました。それから、この曲では、ホルン(萩原顕彰さん)のソロが素晴らしかった。大らかな豊かな音で。
このオケは、サイトウキネンなどに出ているフルートの岩佐さん、N響オーボエの和久井さん、新日フィルクラリネットの澤村さん、コンミスは日フィルの江口さん、腕っこきのフリーの方々を揃えていて、いい仕事しています。沼尻氏はこの4月から群響のポストにも就くようですが、この出身地(ワタクシの4つ下で出身小学校からするとすぐ近くの筈なんで、ちっちゃい頃であっていてもおかしくない)での活動を、さらに充実させていって欲しいと思います。
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