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2010.02.18

小村雪岱とその時代

Rimg0012これも終わってしまった展覧会です。「小村雪岱とその時代埼玉県立近代美術館、会期末も近い2月11日に見てきました。
例によって(汗)展覧会の様子は写真満載のこちらこちらを見て頂くことに致しまして。
雪岱は、連載小説の挿絵や本の装丁(見返しの絵も含む)で大正から昭和初期にかけて一世を風靡した画家です。また舞台美術でも大活躍された人だそうですが、ワタクシ、恥ずかしながらこの方も名前は知りませんでした。芸術新潮に指摘されたとおり。

この人、初期の仕事の場所は資生堂であったとのこと。先日の杉浦非水にとっての三越もそうでしたが、この時代、芸術家を育てることになる企業の存在が大きいですね。まあ、この時代に限ったことではないとは思いますが。戦後の一時期であればサントリー?

そして。雪岱は泉鏡花を崇拝していて、偶然から知己を得、著書の装丁を任されるのですが、ワタクシはこれらの仕事に一番感銘を受けました。江戸の残るしかし東京の、そしてそこに生きる人間のしゃれたモダンな佇まい。特に細い縦線の連なりが特徴的な(そして時に斜めの直線が画面構成の基調となる)デザインは、ある意味人工的な、触ると壊れてしまいそうなはかない美しさを感じさせます。

あと、歌舞伎や新劇の舞台装置。これは残念ながら写真や原図、模型などでしか見ることになるのですが(一部映像もあり)、洗練されたすっきりとした感じの舞台装置は、さぞその時代の観客の目を楽しませたことでしょう。

雪岱は53歳で、まるで鏡花の後を追うように昭和15年には亡くなってしまいます。もっと長く生きて活躍して欲しかったと思う反面、戦争が激しくなる前になくなったのは、ある意味で幸せだったのかもしれません。
もちろん、舞台や装丁や挿絵ではない、独立した絵の作品だってないわけではありませんが、そちらでももっと作品を残してくれれば、と思わないこともありません。周囲は、そうした創作にも力を入れるように勧めたけれど、色々と忙しいのでそのうち、などと応えていたそうです。本心はどこにあったのか分かりません。

そうそう、上野写真でチケットの下敷きになっているのは、雪岱のデザインになる雪兎をモチーフとしたハンカチです。彼は、着物の柄のデザインなどもしていたんですね。会場には雪兎の行燈もありました。


今年に入って、是真も見ましたし、先ほどふれた非水も。さらに、お正月には、エントリにはしませんでしたが、サントリー美術館の清方も。江戸から明治、大正、戦前までの連続性を強く感じ、(自分はまだ生まれてもいなかったくせに)懐かしく浸ることができました。

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Comments

コメントありがとうございます。図録が先日届きました。見た時のことをまざまざと思い出すようで、このように遅れてやってくるのもこれはこれで良いかな、と思ったりしました。ほら、日常、次々と新しいことが起きる日々で、振り返りが足りないかもしれないので。

是真しかり、半ば忘れられた芸術家に目を向ける良い展示でしたね。挿絵から泉鏡花の作品も読んでみたいと思いました。

終戦前に亡くなられたということに、
どこか運命的なものを感じます。

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今月の芸術新潮の特集は“小村雪岱”という画家の特集でした。初めて目にする画家でしたが、女性の背中に刺青を彫っている表紙がとても印象的でしたから、手にとってパラパラとページをめくっていると、泉鏡花の写真が出てきました。この小村雪岱という画家は泉鏡花に相当縁があるようなことをそこに書かれてあったので、直ぐに本を購入したのです。で、その雑誌の特集の最後には、小村雪岱の展覧会の情報も記載されていて、これは見なきゃいかんとばかり埼玉県立近代美術館へと向かったのでありました。(2/14で終了) 大正から昭和初... [Read More]

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