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2010.10.17

アラベッラ/新国立劇場

新国立劇場の「アラベッラ」を見て参りました。98年9月初演のプロダクションに続くこの劇場で2回目となる新制作。なかなか楽しめました。

何と言っても良かったのはオーケストラ、というか指揮者でした。舞台の上と下が寄り添って一つの音楽を作るということをかなり高いレベルで実現していたと思います。特にいわゆる聞かせどころのしみじみ系の音楽が流れるところの丁寧な弱音は非常に雄弁でした。良かったなぁ。思い出しても「良いなぁ」と思います。声を聞かせるために(?)オーケストラを気持ちよく鳴らす部分は少なかったのですが、まあ、それはそういうものかと。ライトモチーフも生ではよく聞こえたと方だと思いますが、それでもオーケストラ、オットットというところはありましたね。特に、第2幕の冒頭の音程の合わなさはもはや事故(誰か音を間違えた??)。なんてことはあげつらえればありますが、でも、良かったところがあれだけあれば、ワタクシは十分満足、楽しみました。

この演奏に対して拍手の終わり際に「オケ替えろー」と叫んだ方が4階席右サイドかな、にいらっしゃいましたが、ワタクシは賛同できません。

歌手はフィアカーミッリとマッテオを除き及第点でした。まあ、この2人も頭を抱えるというほどではありませんでした。
ただ、フィアカーミッリは目立った破綻があるわけではないのですが、この役の要求するスペクタクル的なテクニックとかど派手さを発揮していたとは言い難い。そのめくるめくアクロバティックな声によってこそ、斜陽期に入りつつあるウィーンの内実は上品とは言い難い「社交界」の空虚さが表されるのだと思いますが、そこに到らず涼しい空気が漂ってしまったように感じます。
片やマッテオ、これは3幕でアラベッラと言い争って、そこにマンドリーカ登場して対決、という辺りでガス欠を起こしてしまったようで、高音域などはヒヤヒヤものでした。まあ、この役はもともと情けない男ですからね(笑)

一番良いかなと思った歌手がヴァルトナー伯爵(お父さん)だというのは、いやちょっと困ったことではありますが、まあ、他の人たちも、高い音が微妙に当たらなかったりとか色々あったものの、悪くはなかったかな(良くもなかったけれど)。

演出は、青を基調とした美しい舞台で、無難にまとまっていた感じです。シュトラウスの作品で時代を作曲者の生きた年代に設定し直してのプロダクションというのはよく見ますが、今回もそれ。セリフのない役にもしっかり役割が与えられており、それによって、この作品を演出家がどう捉えていて何を伝えたいかということが伝わったところ大でした。たとえば、第2幕では、アラベッラとマンドリーカが舞踏会場にいながら紗幕の前で2人だけの時間を過ごすのですが、その紗幕を従業員が引こうとするところをマンドリーカの家来たちが「俺たちに任せとけよ」と平手打ちを食わせて勝手にやってしまったりするところ、彼が明らかにオックスの血を引いていることが分かります。紗幕と言えば、第1幕、たしかアラベッラが登場するまでは紗幕が半分引かれた形の舞台だったかと思いますが、それを開けるのはヴァルトナー家の女中。彼女は第3幕であられもない格好で降りてきたズデンカに履き物を渡し、その後階段の手すりでヨヨと泣き続ける、となかなか大活躍でした。「アラベッラ」のト書きではどう書かれているのか(あるいはいないのか)知りませんが、原作の「ルツィドール」では年老いたとされている彼女、この舞台では通るだけで件の家来たちの視線を引きつけたりして、そんなに老女ではありませんでした。女中さんと家来たちは、ウィーンと田舎、洗練と粗野の良い対比になっていたと思います。

ただ、4階席からでは、肝腎の主役級は芝居としてちゃんと出来ていたかどうかは、幸か不幸か、よく分かりませんでした。

あ、一つどうかなぁ、と思ったのは、第3幕の階段の長さ(笑)。ちょっと長すぎてズデンカの登場が中途半端になっちゃったんじゃなかろうか。アラベッラがグラスを手に降りてくる時にはちょうど良いんですけれどもね。

この位の舞台を出してくれれば、新国立劇場には文句はありません。尾高監督の下でこれからも頑張って欲しいなぁ。

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Comments

yokochan さん
遅くなりましたが、コメントありがとうございました。良かったですよねぇ、メイドさん(笑)。
ともあれ、このレベルの公演を出してくれればコンスタントに見に行きます。

Posted by: ガーター亭亭主 | 2010.10.23 at 01:20 PM

こんばんは。
メイドさんの涙にときめいたひとりです(笑)
歌手以外に、こんな人物を見つけると舞台に幅が出て楽しくなります。

しかし、「オケを替えろ」が出たのですかぁ。
東フィルは、うまくやっても、損してしまうキャラクターなんですねぇ。

確かに「パパ、ママ」には階段長すぎかもです(笑)

Posted by: yokochan | 2010.10.19 at 12:07 AM

コメントありがとうございます。
たしかに、メイドさんに注目のエントリーを目にしますね。ズデンカは、う~ん、う~ん、ノーコメント(笑)。

Posted by: ガーター亭亭主 | 2010.10.18 at 08:14 AM

こんにちは。
やっぱりメイドさん(女中さん)は強い印象を持たれた方が多かったみたいですが、ガーター亭さんが原作まで読まれたというのはさすが読みが深いですね。そうそう、なるほど演出者がその原作まで精通してなかったら、女中さんにそんなに重きを置いた演出はしなかったよなあと、記事を読ませて頂いて思いました。
また、(原作に近づけるということで)そもそもはズデンカを主役にするみたいな演出ってきいてたのに、見に行ったらそんなでもなかったのでちょっと拍子抜けしました・・・ズデンカが好きなもので私。

Posted by: naoping | 2010.10.17 at 09:42 AM

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