「イル・トロヴァトーレ」@新国立劇場
新国立劇場の今季最初のオペラ、「イル・トロヴァトーレ」に行ってきました。配役とかはこちら。
この公演の最大の特徴は「音が大きい」ことでした。歌手たちも声量で不満を感じることは無く、オーケストラの音も鳴らし放題とはこのことでしょうか。これは、情念渦巻く雄渾なヴェルディのこの曲を表現するのには一つのやり方であるかもしれません。特に、合唱(相変わらずとてもうまい)の登場する場面は効果的だったと思います。
が、全体としてみるとどうしても単調に感じてしまいました。こんな一本調子の曲では無いでしょう。特にマンリーコ。強靱な声を持っているのだけれど、柔らかく歌うことが得意ではないようで、これではいけません。愛とか苦悩とかそういうところになってしまうと。。。
レオノーラは、出だしの音程が非常に不安定で先行きが案じられましたが、後半は安定しました。しかし、残念ながら高音になるとかなり苦しい。ただ、それを除けば、若干息が短かかったですが、全体としてみれば歌になっていたと思います。でも、あんまり器用じゃないのでしょうか、早いテンポについて行けないところも。
ルーナ伯爵は、さらにちゃんとできていたと思いますが、どうも良くも悪くもあまり印象に残っていません。
アズチェーナが、主役の中では一番良かったかなぁ。彼女も最初の方はアレアレってところもありましたが、表現の幅は広くって、この役のどす黒いドロドロの気持ちを十分に出していたと思います。
でも、実は一番良かったのは、フェランドの妻屋氏だったりします。主役級で歌い詰めの人と出番があまり多くない人を比較してはいけないとは思いますが、うまかった。音楽を味わい、満足しました。
指揮者は、うたよりはリズムとか構成とか、シンフォニックな感じを受けました。歌手にとってはあまり歌いやすくはなかったのではないかとも。それと、歌の頂点の決め所で引っ張るのは悪いとは言わないけれど、それらしくはならず、わざとらしいというか、大時代的な印象を受けました。まあ、まだ若いんですよね、この人。
演出は、台本にはない「死の象徴」っていう黙役を随所に登場させたところが眼目で、これは私は悪くなかったです。音楽の邪魔になるようなことはなく、作品に内在しているそれぞれの場面のイメージを増幅させるのに役立っていたと思います。ただ、ちょっと説明的になり過ぎてるなという感じを何度かは受けましたが。装置や照明、色使いも、あまりリアルすぎることはなく、かといって意味不明なんてものではなくて、良かったです。
装置の転換が幕を開けたまま行われた部分、そうではない部分が混在していたのは技術上の理由なのかよく分かりませんが、若干不統一に思いましたが、傷と言うほどのこともなく。それよりは、各幕(?)の初めに導入とか話の補足説明のような文章が幕に映し出された(字幕も出た)のですが、その後に指揮者が登場して拍手、というのは、順序を逆にした方が入って行き易かったのではないでしょうか。残念。
色々言いましたが、まあ、頭を抱えるようなモノではなかった(除くマンリーコ)し、実は結構楽しんでいたりします。まあまあの今季の幕開けだと思いました。ちょっと甘いかな。ま、今後への期待も込めて。
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