長谷川等伯 没後400年特別展
先週の初めに始まった東京国立博物館の「長谷川等伯展」に行って参りました。
等伯の没後400年の大回顧展で前評判も高く、かなりの混雑を覚悟していったのですが、昨年の「皇室の名宝展」などと比べると(時期の違いはありますが)、そこまでは混み合っていないという感じでした(入館のための行列はなかったし)。
等伯がまだ信春と名乗っていた頃の能登の国での絵仏師としての作品から、京に上り大徳寺山門の天井画などを手がけるあたりまでが大体時系列順で、あとは肖像画、智積院の障壁画などの金碧画と続き、ここまでが第1展示室。第2展示室は、水墨画と本法寺の巨大な涅槃図、そして最後に松林図という構成でした。
初期の仏画はなかなか細密で、この人が後年、楓図やら松林図やらを書くようになるとは想像もつきません。もっともピカソだってそうですが。
この時代のものとして日蓮上人の肖像画がありましたが、これがワタクシはなかなか気に入りました。なかなかリーダーシップを感じさせる面構えで、今の世にもこういう人がいないものかしらんなどとふと思ったりしました。
智積院の金碧障壁画、萩芒図、柳橋水車図、波濤図などのセクションは、もうきらびやかでそしてダイナミックでとにかく圧倒されます(一番圧倒されるのは波濤図でした)が、そんな中で、萩芒図は独自の世界でこちらの心に風を吹かせるような静かな力を持った作品でした。これが実は今回の展覧会、全作品の中で一番素晴らしいと思ったものでした。波濤図のダイナミックさ&鉱物標本を見るような岩の書き方も捨てがたいんですけれどねぇ。
水墨画のセクション、ふわふわした猿も何とも言えず良いし、超有名な松林図も言うまでもなく。けれどワタクシは敢えてここでは檜原図をイチオシとしたいと思います。近衛信尹の和歌とのコラボレーションです。これが日本文化の粋ですよねぇ。
ところで、全部を通して見て、この人は書かずに見せることの天才だと思いました。対象をトリミングして、画面外のその姿を想像させる、それによってダイナミクスは無限大(と言うとちと大げさですが)までに広がります。また、金泥で色々なところを隠す、これも同じこと。そして松林図では何も書かないことによって、そこにあるものを感じさせる。いずれもそのテクニック自体は特に珍しいと言うことはないのかもしれませんが、この力にこの人はとてもとても長けていると。
展示替えがあるとのことなので、後半にも必ず足を運ぶつもりです。
いつものとおり(?)はろるどさんのところ(第4部まである力作エントリー!)とTakさんのところをご紹介しておきます。画像もふんだんです。もし、このエントリーで等伯展に興味を持たれた方がいらっしゃれば、まず、このご両所のところをご覧頂くことをお勧めします。
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